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 「本日、私たちは宇宙探査の新しい手段を確立しました」――開口一番、津田雄一・はやぶさ2プロジェクトマネージャはこのように宣言した。4月5日午後4時半、宇宙航空研究開発機構・宇宙科学研究所(JAXA/ISAS)の小惑星探査機「はやぶさ2」の人工クレーター生成実験成功を受けての記者会見の席上だった。

「宇宙探査の新しい手段を確立」“勝利宣言”をする津田雄一プロマネ(撮影:松浦晋也)

 はやぶさ2は2014年12月に打ち上げられ、2018年6月に目的地である小惑星リュウグウに到着、その後リュウグウの探査を進めている。今年2月22日には、リュウグウ表面に降下しての表面サンプルの採取にも成功した。今回のクレーター生成実験は、世界でも初めての手法を使う、極めて挑戦的なものだった。

 今後、はやぶさ2は、生成したクレーターを特定し、可能と判断される場合には、クレーターから噴出したリュウグウ内部のサンプル採取に挑む。成功すれば世界初の快挙となる。

 昨年来のリュウグウ探査で、はやぶさ2は、3つの大きな太陽系探査技術の革新を成し遂げた。

1)小惑星のような微小重力天体表面を自律的に跳ね回って探査するロボット「MINERVA(ミネルヴァ)-II-1 A/B」を投下。運用に成功した。

2)初代はやぶさが成功させることができなかった「サンプラーホーンを小惑星表面に押しつけ、弾丸を撃ち込むことでサンプルを採取する」手法を、完璧な手順で成功させ、その有効性を証明した。

3) 衝突装置(SCI)を使った人工クレーター生成実験を世界で初めて成功させた。

 これらは、今後の日本の太陽系探査にとって大変有用な技術である。将来の探査機での積極的利用を図っていく必要があるだろう。同時にこれらは、日本独自の技術であるが故に、国際協力による大規模な探査に、日本が対等のパートナーとして参加していくためにも、有力な“武器”となる。

はやぶさ2から分離され、ゆっくりとリュウグウへ降下していくSCI(動画:JAXA)。はやぶさ2搭載の中間赤外カメラ(TIR)が撮影したもの。

クレーターを生成して画像データを取得、探査機本体は待避して待つ

 クレーター生成実験のために、はやぶさ2は、爆発により銅製の衝突体を打ち出すSCIと、衝突の瞬間を観測するリモートカメラ(DCAM3)を搭載している。実験では、まず4月4日午後より、同機が常駐しているリュウグウから20kmの位置「ホームポジション」から、翌5日の朝までゆっくりと時間をかけて高度500mのところまで降下。そこでSCIを分離し、さらにリュウグウの側方へ移動して、SCIの爆発を観測できる位置でDCAM3を分離した。次いではやぶさ2は、リュウグウの裏側に退避。4月5日午前11時36分、SCIが爆発して衝突体をリュウグウ表面に打ち込んた。DCAM3も、その瞬間を撮影することに成功。リュウグウからの噴出物がはやぶさ2本体にダメージを与えることもなかった。