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人気ゲーム「どうぶつの森」の最新ソフトが中国本土のECサイトから削除された。香港内外のメディアで香港の民主活動家がゲーム内の島を新型コロナウイルス流行下で新たな抗議活動の場所として利用したことが原因とみられる。ゲームまで政治化される香港の今をどう理解すべきなのだろうか。

突如消えたどうぶつの森の中

 任天堂のゲームソフト「あつまれ どうぶつの森」が淘宝などの中国のECサイトで検索できなくなった。同ソフトが遊べるゲーム機「ニンテンドースイッチ」の中国本土での販売は「微信(ウィーチャット)」を運営することで知られる騰訊控股(テンセント)が昨年12月に発売したばかりだ。中国本土では正規版の「あつまれ どうぶつの森」はまだ発売されていない。今回消えたのは中国政府のコンテンツ審査を受けていない海外版である。さらにこの件と同じタイミングで、中国政府当局がゲームへの規制をさらに厳しくしようとしていると一部報道で伝えられた。例えば他の国のユーザーとコミュニケーションが取れるなど、世界中で同じ機能が使えることを宣伝文句とすることが禁止されるという。

 中国政府当局はもちろん、任天堂も淘宝などのECサイトもコメントを出していないため、なぜ突然検索できなくなったのかは分からない。この問題が起こる前に中国の政府系メディアにどうぶつの森の人気が取り上げられている。そのため、少なくとも当局はこれまでこのゲームを取り締まろうとはしていなかったことが見受けられる。ソーシャルメディア「微博(ウェイボ)」上の中国消防の公式アカウントではどうぶつの森のスクリーンショットを利用して防火の呼びかけが行われており、上海公安も海外からの入国者に対する14日間隔離を同ゲームのスクリーンショットで広報している。

 なぜこのゲームは突如検索できなくなったのか。多くのメディアは、カスタマイズ性が高く、ユーザー間での通信も容易なゲームとして、香港の抗議活動の新たなフィールドになったことが原因だと推測している。

新型コロナの中、ゲーム中で抗議活動

 香港の民主派政党デモシスト(香港眾志)の秘書長(事務局長)の黄之鋒氏がどうぶつの森のゲーム上で抗議活動のための島を作成し、その写真をツイッターに掲載した。黄氏は23歳で、2012年の国民教育反対運動から長らく香港の民主化・反政府活動に関わってきた若手の民主活動家である。4月10日にはデモシストのYouTubeチャンネルでゲームの「生実況」も行った。

黃之鋒(@joshuawongcf)氏のツイッターより

 彼以外にも香港のどうぶつの森の中で香港政府・中国政府への抗議の意思を示した抗議者がいるようだ。「マイデザイン」という機能を使って抗議活動のスローガンなどをパネルとして作成し、自らの島に掲示した人もいれば、中国の指導者の顔をパネルとして作成して虫捕り網でたたくことで抗議の意思を示した人もいる。また、「島メロ」という島の音楽を自身で設定できる機能を利用し、抗議活動でしばしば用いられた「香港に栄光あれ」(願栄光帰香港)に設定した人もいた。

 新型コロナウイルスが流行し、路上での抗議活動ができない中、抗議活動の場所をゲーム上にも広げた形だ。このゲームソフトの特徴は自身で絵や音楽をゲーム上で作成できるようにカスタマイズ性が高いことだ。新型コロナウイルスの流行で外出ができなくなり、このゲームは香港でも大きな人気を博している。外出しての大規模な抗議活動は難しくなっている代わりに、抗議者はどうぶつの森を新たなデモの場所として利用しているのだ。