前回、新型コロナウイルスの影響で米国のライドシェアビジネスが大きな影響を受けていることを、現場のドライバーの視点で紹介した。4月に入っても在宅命令は解除されず、筆者は仕事用の車を返却した。今回は、ドライバーがどのような労働環境に置かれているのか、特に大手2社が上場後にどのように変わったのかをお伝えする。

(写真:AP/アフロ)
(写真:AP/アフロ)

 読者の中にはサンフランシスコやシリコンバレー、ニューヨークなどの米国の都市に来て、ウーバーテクノロジーズやリフトのサービスを使ったことがあるという方も少なくないだろう。

 例えば、サンフランシスコ国際空港から市内までの運賃はおよそ30ドル前後だ。一般にドライバーの取り分は8割と言われてきたので、およそ24ドルが我々の手元に残った。サンフランシスコの市内でも仕事をして、1日に250ドル程度をなんとか稼いでいた。1カ月に20日間働けば約5000ドルということになる。

 ところがこの8割という取り分は次第に改悪され、リフトから筆者に送られてくる実績データによると直近ではおよそ6割になっていた。1日250ドルだった収入は、200ドル以下に減った。

売り上げを大きく超えるコスト

 なぜ、そのようなことになるのか。まず我々、ライドシェアのドライバーは、ウーバーやリフトの社員ではない。ライドシェア企業と契約する個人事業主のような扱いだ。労働組合もない。そうしたところに、2019年春に両社が相次いで上場し、株主からの黒字化要求が厳しくなっている。

 ウーバーの19年12月期の業績は、乗客が支払った料金などを合計した総取扱高(Gross Booking)が前年比31%増の7兆201億円だった。最終損益(GAAP Net loss)は9186億円の赤字だ。乗車やフードデリバリー、電動スクーターを合わせた年間総トリップ数は前年比32%増で、69億回を超えている。ドライバーへの報酬を支払った後の売上高(Revenue)は1兆5279億円だ。

 一方のリフトは我々ドライバーに払った分を含めたサービスの総取扱高、何回乗客を乗せたのかを示す総トリップ数は公表していない。19年12月期の売上高(Revenue)は前年比68%増の3905億円だ。ここには我々ドライバーに支払ったフィーは含まれていない。最終損益(Net loss)は2810億円の赤字となっている。赤字額が前年度の3倍に拡大している。19年の第4四半期に1回でもリフトを利用したことのある乗客数は前年同期比で23%増の2290万人だ。

 ウーバーは1兆円近く、リフトは3000億円近くの巨大な赤字だ。両社とも売り上げのおよそ3分の2の赤字を出している。ライドシェアのビジネスモデル自体が成り立たないものなのか。

 両社が現在、赤字幅の縮小に向けて行っている施策は大きく2つだと考えられる。1つは我々ドライバーへの支払いを引き下げること。もう1つが顧客の乗車料金の引き上げだ。筆者の実績データで比べると、18年に比べて19年は10%以上の値上げをしていると考えられる。

 では筆者がドライバーを務めているリフトについてもう少し詳しく見ていくことにしよう。

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