電源の4割を天然ガス火力発電に頼る日本。ウクライナ危機を受け、国際的な需給の逼迫が脅威となっている。国際大学で副学長を務める橘川武郎教授は、今回の有事に至る前から日本の「買い負け」が起き始めていたと指摘する。

橘川武郎(きっかわ・たけお)氏
橘川武郎(きっかわ・たけお)氏
1951年和歌山県生まれ。現在は国際大学副学長、同大学院国際経営学研究科教授、東京大学名誉教授、一橋大学名誉教授。経営史学会会長や経済産業省・資源エネルギー庁の総合資源エネルギー調査会委員などを歴任。エネルギー問題や電力業界の構造に精通し、歯に衣着せぬ論客として知られる。著書に『エネルギー・シフト』『災後日本の電力業』など。

液化天然ガス(LNG)は既に、日本勢と欧州勢が競合する構図になっていませんか。

橘川武郎・国際大学副学長(以下、橘川氏):極めて単純にいうと、LNGの輸出大国である米国から見て、欧州のほうが日本よりも高くLNGを売れるという魅力がある。米国産LNGは長期契約ではなく、スポット(都度決め)での取引が主流だ。欧州のほうが(従来は地続きのパイプラインで天然ガスを賄えていたので)LNG調達だとスポットの比率が高く、足元の高騰した価格でも調達している。

 日本は2021年に策定した第6次エネルギー基本計画でLNG重視を打ち出せなかった(編集注:電源構成で19年度の37%から30年度に20%へ縮小予定)。この時点で売り手から足元を見られて「買い負け」が起き始めていた。その状況に加え、欧州によるLNG需要の高まりで、さらに日本勢が買いにくい状態になった。

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