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 世界に新型コロナウイルスの脅威が広がっている。日本政府は4月7日に緊急事態宣言を発令し、東京都など7都府県が対象となった。世界最多の感染者数が出ている米国では、東部ニューヨークでの感染状況が注視されているが、西部のカリフォルニア州でも感染者が1万人を超えている。同州のベイエリアでライドシェアのドライバーとして働く吉元逸郎氏にベイエリアの現状とライドシェアエコノミーの現実について、寄稿してもらった。

 3月30日、筆者は米レンタカー大手の「ハーツ」の事務所に赴いた。それまで借りていた車を返すためだ。もはやライドシェアサービスの需要はほとんどない。

 筆者はライドシェアの運転手を4年半前から務めている。しかしこんな事態は初めてだ。3月に入ってから、シリコンバレーとサンフランシスコを併せたベイエリアでは、企業が在宅勤務を強化したため道路が空き始めた。ビジネスでの往来も少なくなり、ライドシェアの利用者も次第に減少していった。

 そこに、3月19日、ベイエリアに続いてカリフォルニア州知事がstay-at-home orders(室内待機命令)を発令、スーパーへの食料品の買い出しや薬局、病院、ガソリン・スタンドへのアクセスなど生活に必要な最低限の行動以外は、家庭内にとどまることを命じた。これにより、レストランから帰る顧客もいなくなった。

 筆者はカリフォルニア州で外出禁止令が発令された翌日、サンフランシスコ市内でドライバーの仕事をした。「リフト」のドライバーアプリで示されるように、金曜日というのに乗客の利用率が急激に落ち込んでいる。

リフトのドライバーが利用するスマホアプリ。顧客のピックアップ指示やナビゲーション、ライド収入の管理などができる

 乗客を受けるオンライン状態で仕事をした5時間16分のうち、稼働時間(乗車要求を受けてピックアップ場所まで移動し、乗客を乗せて目的地に送り届けるまで)が、わずか41分。全体の13%となり稼働率が大きく落ち込んでしまった。通常の金曜日は80%以上だ。いつもなら乗客を降ろす前に次の予約がセットされることも少なくない。休む暇がないほどだった。

 それが短い距離の4ライドだけで、チップ3ドルを含む25ドル程度の収入しか得られなかった。時給5ドル未満という惨澹(さんたん)たる結果だ。筆者の肌感覚では全体として通常の2割程度の需要まで一気に落ち込んで、さらに少なくなっている。ガソリン代などの経費を差し引くと赤字であり、家にいた方がいい。

 そして冒頭のようにハーツに車を返した。リフトの特約で、1週間200数十ドルで車を借りながらライドシェアの仕事をしているからだ。ひとまず車を返却して、コストを抑えることにした。