中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の常務委員会は3月30日、「愛国者による香港統治」のために香港基本法の付属文章の変更を決定した。変更された付属文章は2つあり、行政長官の選出方法を規定した「附件一」と立法会(議会)議員の選出方法を規定した「附件二」が修正された。

選挙制度改正について説明する香港政府の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官(写真:ロイター/アフロ)

 特に民主派の議席数に対し大きな影響があると思われる修正点は3つある。1点目は立法会の定員に占める普通選挙枠の割合を大きく引き下げたこと。2点目は業界別選挙枠のうち民主派に比較的有利だった選挙区が消えたこと。そして3点目は立法会選挙への出馬のハードルを上げたことだ。

 香港の選挙制度はもともと非常に複雑だったが、今回さらに複雑になった。だが、その変更点をひもといていくと、体制側のはっきりとした意図が読み取れる。

大幅減少の直接選挙枠

 まず1点目の普通選挙枠について見てみよう。これまで立法会の総議席数は70で、その半数にあたる35議席は地域別選挙区における普通選挙を実施していた。民主派議員が議席獲得できるチャンスが比較的大きかった。残りの35議席は中国語で「功能組別」と呼ばれる業界ごとの選挙区である。業界別選挙区は個別に有権者資格を設定しており、多くの業界別選挙区では建制派(体制派)の方が有利になっている。だからこそ民主派にとっては、全ての有権者が1人1票を有する直接選挙枠が重要だった。

 しかし、今回の変更で立法会の議席数は従来の70議席から90議席に拡大され、同時に直接選挙枠は35議席から20議席に縮小した。今まで5割あった普通選挙枠が2割ほどに減少したため、民主派の議席数は大きく減少する可能性が高い。

 直接選挙枠の議席数が大幅に減少する一方、「選挙委員」が投票する40議席が新たに設置される。選挙委員会とはそもそも行政長官を選出するためのもので、建制派に有利な制度だったが、今回の変更でさらにその度合いが増した。この点については、後で詳述する。

民主派に有利な選挙区を徹底改変

 2点目の業界別選挙区を見てみよう。まず、区議会議員の枠が消えてしまった点が民主派にとっては特に痛手だろう。

 業界別選挙区の中には区議会議員が立候補者となる2つの選挙区が存在する。

 まず「区議会(第一)」(1議席)という区議会議員が立法会議員を互選する選挙区である。2019年の選挙により区議会の多数派は民主派となっているため、この議席は民主派が獲得する可能性が高かった。この選挙区が廃止されて、代わりに香港特区全人代代表・香港特区政治協商委員など中央政府に関わる役職に就いている人々から選ばれる選挙枠が追加される予定だ。

 もう1つは「区議会(第二)」(5議席)という選挙区で、他の業界別選挙区に投票権を持たない大多数の香港市民が有権者となる。他の業界別選挙区を全て合わせた登録有権者数(法人も含む)はおよそ25万だが、この選挙区の有権者は400万人を超える。直接選挙枠と似たような性質を持っており、民主派にもチャンスがある選挙区だったが、こちらも廃止されることとなった。

 その他にも民主派に有利ないくつかの業界別選挙区が改変される。例えばこれまで民主派議員しか当選したことのない「情報技術」業界の選挙区は、「科学技術イノベーション」業界の選挙区として有権者の業界範囲が変更されるだけではなく、個人票が廃止され投票資格のある団体のみが投票できるようになる。

 民主派以外当選したことがない「衛生サービス」業界(1議席)は「医学」業界(1議席)と統合されて、合計1議席になる。減少した1議席は新設される3つ目のビジネス界選挙区に充てられる予定だ。その他「飲食」業界や「スポーツ演劇文化および出版」業界などいくつかの業界別選挙区の個人投票が廃止され、資格を持つ団体のみが投票できるようになる。

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