安倍晋三政権は7日、新型コロナウイルスの感染拡大に対処するために、事業規模で約108兆円の経済対策を発表した。一方、数週間ほど前からロックダウン(都市封鎖)が相次いで実施されている欧州各国でも、厳しい経済現状に対して大型の経済対策が発表されている。その中で、モデルとなっているのがリーマン・ショック時のドイツの雇用維持対策だ。
日本よりも厳しいロックダウンを実施して経済が大きく落ち込んでいる欧州は、どのようにして雇用を維持しようとしているのか。リーマン・ショックやユーロ危機のころ、みずほ総合研究所のロンドン事務所長として欧州の経済対策を間近に見てきたみずほ総合研究所欧米調査部の吉田健一郎・上席主任エコノミストが解説する。

安倍晋三政権は7日、新型コロナウイルスの感染拡大に対処するために、事業規模で約108兆円の経済対策を発表した。同時に発表した緊急事態宣言によって、東京など7都市ではこれまで以上に厳しい外出自粛が求められ、経済への打撃は必至だ。
一方、数週間ほど前からロックダウン(都市封鎖)が相次いで実施されている欧州では、新型コロナ感染拡大の経済への影響が日本より一足先に明らかとなりつつある。国内総生産(GDP)との連動が強い3月のユーロ圏購買担当者景気指数(合成PMI)は29.7となり、リーマン・ショック時の過去最低水準であった36.2を大きく下回り、統計発表後で最低の水準まで低下した(図表1)。
厳しい現状に対して、ユーロ圏各国は相次いで大型の経済対策を発表している。時短勤務に伴う雇用者の所得補償や、資金繰りに窮した企業への資金支援、金融機関からの企業融資への政府保証の付与などが対策の柱だ。3月24日のユーロ圏財務相会合後の発表では、各国の経済対策を合計するとGDP比2%、流動性支援は同13%前後とされる。
ユーロ圏内で経済規模が最大のドイツでは、1500億ユーロ規模(約17兆8000億円、GDP比約4%)の経済対策が発表されている。財政措置については、中小企業への資金支援や時短勤務に伴う部分的な所得補償など、企業と雇用への支援が政策の柱となっている。経済安定基金を通じた最大6000億ユーロ(約71兆3000億円)の政府保証なども合わせると、対策規模は7500億ユーロ、GDP比では日本の経済対策とほぼ同等の約22%となる。
ドイツの7500億ユーロの支援策については、その内訳は図表2に示した通りだ。2020年は、企業と雇用維持を主眼とした政策に重きが置かれている点が特徴である。
例えば、時短勤務手当(Kurzarbeitergeld)については、時短勤務により削減された給与の最大67%を補填し、時短勤務を適用した雇用主に対して、社会保障費を政府が全額肩代わりする。英フィナンシャル・タイムズによればこの制度自体は1900年代前半からある既存のもので、リーマン・ショックなど過去の経済危機では拡大適用され、失業を抑制する役割を果たしてきた。通常は、従業員の30%が10%以上の時短勤務となった場合に適用が可能だが、今回の新型コロナ対策では、従業員の10%が時短勤務を実施すれば適用できるように、適用基準が一時的に引き下げられた。
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