30年ぶりに3万円台を回復した日経平均株価。「老後2000万円問題」が注目されていたところに、株高が加わって投資への関心が高まっている。一方、超高速取引や地政学リスクなどで株価が大きく上下する場面もあり、現状の「株高」局面で投資を始めて、損を出してしまわないかとためらう人も少なくないだろう。

 不確実性が高まる時代に、個人はどういった姿勢で投資すればよいのか。「いい会社」に投資するという独自の運用で知られる鎌倉投信の鎌田恭幸社長は、「投資はいつ始めてもいい。市場との適度な距離感が成功のコツだ」と語る。

日経平均株価が一時3万円台を回復した今の市場をどうみていますか。

鎌田恭幸・鎌倉投信社長(以下、鎌田氏):当社は相場つき(相場の動き方)で投資先や投資のタイミングを変えるということはしないので、会社として株価の予測はしていません。

 この前提で個人的な見解を申し上げると、今の株価は決して高いとも安いともいえません。現在考えられるリスクは、大規模な金融緩和による過剰流動性、地政学的な問題、足元の実体経済・企業業績に比べて高いバリュエーション(企業価値評価)などが挙げられると思いますが、一方で、今後10年を考えれば、コロナ禍をきっかけに社会経済が変革の時を迎えているといえます。

鎌田恭幸氏(かまた・やすゆき)
日系・外資系信託銀行を通じて30年超にわたり資産運用業務に携わる。株式の運用、運用商品の企画、年金などの機関投資家営業などを経て、外資系信託銀行の代表取締役副社長を務める。2008年11月に鎌倉投信を創業。著作に『日本で一番投資したい会社』(アチーブメント出版)など。

コロナ禍が社会を大きく変えようとしているということでしょうか。

鎌田氏:いいえ、社会・経済的な影響はありましたが、コロナ禍で変わったものは何もありません。

 いつ起きてもおかしくなかったパンデミックが顕在化し、2000年以降のインターネットの普及を下地に、じわじわ動き出していたDX(デジタル・トランスフォーメーション)が一気にスピードアップしています。コロナ禍が世の中を変えたのではなく、リスクの表出とトレンドの加速があったという理解です。

 今の株価が高いのは過剰流動性もあるでしょうが、コロナ禍をきっかけに変化が加速して経済的にプラスになるという期待があると思います。

波は予測しない、波はあるもの

日経平均株価が3万円台に乗せたものの、2月26日に1200円超も大幅下落するなど不安定さも感じます。「3万円という高い水準で、投資を始めて、損はしないか」とためらってしまう人もいると思います。

鎌田氏:私もお客さんに、「今投資を始めるには、株価が高いだろうか」と聞かれるのですが、「投資はいつ始めてもいい」と答えるようにしています。株価の予測は非常に難しい。今回はパンデミックですが、その前はリーマン・ショックや東日本大震災がありました。米国の片田舎の不良債権が世界を揺るがし、今はウイルスが世界を震撼(しんかん)させています。

 こうした波を予測するのではなくて、波はあるという前提で変化に耐えうるポートフォリオを考えることが個人投資家にとっても非常に大事だと思います。プロでも市場のあやを取れる(投資のタイミングを計ってもうけを出せる)トレーダーは、1000人に数人というところでしょう。長期で保有できる資産を継続投資することが基本的なスタンスだと思います。

神奈川県鎌倉市の築100年の古民家をリフォームして本社オフィスとしている

御社の投資先はコロナ禍で経営はどんな影響を受けたのでしょうか。

鎌田氏:鎌倉投信が設定・運用する公募投資信託「結い 2101(ゆいにいいちぜろいち)」の投資先68社のうち、3割はコロナ禍で売り上げを伸ばし、4割が維持し、残り3割が悪影響を受けて業績を下げています。投資先全体で見ると、業績は悪くありません。

 売り上げを伸ばしたのは、コロナ前からの変化の流れに乗っている会社。維持しているのは、危機に対してしっかりとした財務体質と事業ポートフォリオで対応できている会社。3つ目、これが最も大事なのですが、悪影響を受けているけれども新しい事業を展開しようと動けている会社。コロナ禍の1年で成長の種を見いだせています。業績はマイナスでも、環境が落ち着いてきたら強い会社になると思っています。

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