TikTokもローンチから2年半がたち、動画業界は次のステージを模索し始めている。

 TikTokの運営元であるバイトダンスは19年1月、動画を使って交流するSNS「多閃(ドゥオシャン)」を発表した。プロモーションビデオを見ると、現在行われている文字や音声中心の仲間内でのコミュニケーションを動画によって代替することをイメージしていると分かる。TikTokの成功の要因となった「誰でも動画を撮り、配信できる」をさらに突き詰めた形だ。

 しかしドゥオシャンはローンチ直後こそ巨額の広告を投じて話題になったものの、2カ月が過ぎ、既に半分忘れられたアプリと化している。こうした日々のコミュニケーションに使われるツールは手軽さが重要だ。動画を使い、表現をリッチにすることで逆に負担が増えてしまっては元も子もない。この点が原因ではないかと個人的には考えている。

 またライブ配信を他のネットサービスが取り込んだのと同様に、ショート動画においても他サービスによる取り込みが始まりつつある。アリババのECサイト「淘宝網(タオバオ)」や、食べログに似た評価アプリ「大衆点評(ダージョンディエンピン)」などがこぞってショート動画のコーナーを設け始めている。逆にTikTokもECに進出しており、ショート動画機能だけのアプリは終わりつつある。

日常を動画で発信する「Vlog」

 2019年末ごろから本格普及が始まるといわれる次世代通信規格「5G」時代を見据え、Vlogという形式も徐々に広まりつつある。5~15分程度のやや長尺の動画を日記的に発信するもので、VUEなどの専門アプリのほか、大手SNSの一角であるウェイボも力を入れている。

 テクノロジーの進化や通信容量の拡大などで、こうした長時間動画がコスト的にも心理的にも手軽になるのは事実だ。それでも撮影や編集には相応の技術や経験が必要で、「誰でも手軽に」というTikTokの路線とは相いれない。過去の事例を見ても、ゲーム機の高性能化は同時に開発コストの高騰を引き起こし、中小ソフトハウスは淘汰されていった。もし長尺の動画が流行するようであれば、前述のインフルエンサーVSプラットフォームの主導権争いの流れを、もう一度インフルエンサー側に引き戻すきっかけになる可能性もあるだろう。

 いずれにしても世界中で「動画の時代」はしばらく続くだろう。その中で、新しいものを次々と取り入れながら目まぐるしく変化している中国の動画市場から、次の「TikTok」が生まれてくる可能性は十分にある。動画をはじめとする中国のメディアの動きを押さえておくのも悪くないだろう。

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