そして誕生したUGCの新ジャンル「ショート動画」とTikTok

 ショート動画はそうした環境の下で生まれた。日本ではとかくTikTokばかりが成功例として取り上げられがちだが、中国国内では必ずしもTikTokの一人勝ちというわけではない。三級以下の地方都市や農村で非常に流行している「快手(クァイショウ)」や、「西瓜(シーグワ=スイカ)視頻」というTikTokと同じ運営元、字節跳動(バイトダンス)が手掛けるお笑い中心のアプリがTOP3を争う。またバイドゥの「好看視頻(ハオカンシーピン)」や国外ではREDの名前で知られる女性向けの「小紅書(シャオホンシュー)」など、様々なアプリが覇を競っている。

 その中でTikTokが国外でも成功した主要な要因をあえて挙げるとすると、以下の3点になる。

①ユニバーサルなおもしろさ
「~してみた」などに色濃かった「同じネタを知っている人同士で楽しむ」というカルチャーとは正反対の、前提となる知識がなくても直感的に笑えたり、おもしろかったりするネタが多い。言語や文化背景にとらわれにくいというこの性質が、のちに中国国外に広がった要因の一つでもあるだろう。

②投稿ハードルの低さ
短い秒数を基本とし、豊富な音楽やエフェクトにより簡単にそれらしい動画ができるような設計にした。

③多くの人に見てもらえる可能性の高さ
視聴や「イイネ」の履歴といったビッグデータに基づくレコメンド、つまりプラットフォーム側がトラフィックを誘導する力を強めたことで、有名ではない普通の人の動画にもある程度の視聴数をいわば「計画的に」流し込むことが可能になった。

 3つ目の「プラットフォームによるトラフィックのコントロール強化」は、実は今後、動画のみならず、SNS(交流サイト)とそれを取り巻くビジネスを大きく変える可能性がある。

 あるサイトがある一定の時間内に獲得できるトラフィックの総和は一定と考えると、そのトラフィックを一般の人にまで広く分配すれば、その分トップのインフルエンサーが得るトラフィックは減ることになる。例えば19年3月初旬現在、TikTok内でトップの投稿者のフォロワーは4300万弱。これはアクティブユーザー数が同程度の大手SNS「微博(ウェイボ)」のトップユーザーのフォロワー数(1億2000万超)と比べると、かなり少ない。この現象は多くの普通の人が「初めての投稿なのにたくさんアクセスがあった」と喜んでいることとトレードオフの関係にあるといえる。

 このバランスの変化は、ビジネス面でも新しい動きを誘発している。今までのSNSでのインフルエンサーはおのおのが勝手に好きなプラットフォームにアカウントを開き、勝手に人気を獲得し、それをいわば勝手にビジネスにしていた。しかしTikTokは単なる「場」であるにとどまらず、トラフィックのコントロールを通じてインフルエンサーの生殺与奪を握ったのだ。

 となれば、その権益をお金に変える試みが始まるのは自然な流れだろう。例えば中国のTikTokでインフルエンサーを起用する場合、基本的にはバイトダンスグループ内の「星図(シントゥ)」というサイトを通して誰を起用するか選ぶ事になっている。インフルエンサーは勝手に客を取る事は許されず、「指名」を待つしかない。そして事実上、胴元たるプラットフォームの意向はその指名に対して大きな影響力を持つ。現代の宣伝キャンペーンには欠かせないインフルエンサーマーケティングに投じられる企業の宣伝予算の一部は、こうして今までと少し違う形でプラットフォームに還元されていく。

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