UGCといわれるユーザー発の動画は、日本においては「ニコニコ動画」を中心に「歌ってみた」「踊ってみた」などが一部の層にまず流行した。その後、そうした行為の一般化とともにより多様なジャンルが生み出され、同時期にクリエーターへの収益還元を強く打ち出し始めたYouTubeに舞台が移行したというのが大まかな流れになるだろう。

 中国版ニコニコ動画とも呼ばれる「bilibili」は、前述したインターネットTVと同じような時期に急成長したサイトだ。bilibiliでも日本のニコニコ動画と同じような「~してみた」動画が公開されていたが、視聴者が中国語で「二次元」と呼ばれるAGC(アニメ・ゲーム・漫画)に日本以上に偏っていたこと、またその層とメインストリームとの間に大きな距離があり、結果として流行が広範囲には伝播しなかった。

ライブ配信で広がったユーザー発信動画

 中国におけるユーザー発信動画の本格的な普及は日本とは異なり、「直播(ジーボー)」というライブ配信から始まった。中国のライブ配信は美女や芸達者な人たちがその様子を配信するという意味でニコニコ動画的な内容に近かった。加えてファンから送られる換金可能なアプリ内通貨や自分の配信内で商品を紹介するアフィリエイト的な行為が実際の収入につながったことも大きく、2016年に一気に普及した。

 よく成功例として挙げられるのがpapi醤(papiちゃん)というネットアイドルで、初期は録画動画の投稿で人気を集め、ライブ配信の視聴者は時には2000万人を超えた。また自らの投稿とのタイアップをオークションにかけ、2200万元(約3億5000万円)で落札されるなど、商業的にも非常に成功した。

 ただブームが去るのも早かった。結局、配信者として成功できるのは美貌を含む、とびぬけたスキルがある人たちだけで、本当の意味での「みんなが動画を気軽に配信し、みんなが見る」という状態にはつながらなかったのだ。

 また投資をどんどん集めてスケールを急速に伸ばすという中国におけるインターネットビジネスの定石が、再現性の乏しい芸能ビジネスと親和性が低かったという事情もある。再現性がないなら物量でとばかりに、一時期「網紅(ネットアイドル)工場」なるアイドルを100人単位で同じ建物に住ませて訓練を施し毎日配信させ、目標を設定して競わせるといった試みも行われたが、いずれも目に見える成果は生まれなかった。

 結果として現在、多くのライブ配信サイトは他のネットサービス事業者に吸収され、別のネットサービス内の情報発信ツールの一部となっている。

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