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新型コロナウイルスの感染拡大を受け、在宅勤務にした企業は多い(写真:共同通信)

 新型コロナウイルスの感染が急拡大していることを受け、東京都が週末の外出自粛やテレワークの徹底を要請した。既に在宅勤務を続けているビジネスパーソンも少なくないが、急な働き方の変化に戸惑う人が多いのも事実。この不測の事態をどう乗り切るか。約700人の従業員全員が完全在宅勤務という会社の社長に「極意」を聞いた。

 その社長の名は中川祥太氏。人事や秘書、経理業務を企業から請け負うキャスターを率いる。設立は2014年で登記上の本社を宮崎県に置くが、実態はないに等しい。社長から社員まで約700人の従業員の全員が完全在宅勤務の形を取っているからだ。

中川祥太氏は約700人の従業員全員が完全在宅勤務の形を取るキャスターの社長(写真:的野 弘路)

 採用面接に始まって入社後も、同僚、上司と直接顔を合わす機会は一切ない。しかし、業務は基本的に個人単位でなくチーム単位で進められ、午前9時になるとチームメンバーがパソコンを立ち上げ、始業する「異例」の企業だ。

 いま、キャスターには全国の企業から、在宅勤務の導入に関する相談や問い合わせが相次いでいる。これまでの仕事のやり方がガラリと変わってしまい、自宅など「新しい」職場にいまだ慣れない社員は多い。長年、オフィスで働き続けてきた人たちにとって、オフィスのほうが働きやすいと思うのは当然かもしれない。それでも、社長の中川氏は「誰もが在宅勤務で仕事を普通にできるようになる」と言い切る。

 オフィス勤務と在宅勤務はどう違うのか。その違いを詳しく見ていけば、自分に適した職場づくりのヒントが見えてくる。

 中川氏は、オフィス通勤だったときは、会社に着くまでのいくつものプロセスが「仕事へのスイッチ」になっていたと指摘する。着替えをして、自宅を出て、通勤電車に乗る。スイッチは、一種のストレスでもあり、そうしたストレスが良い意味で仕事モードに切り替えるためのきっかけになっていた。「本人は気付いていないが、満員の通勤電車に乗ることが仕事へのスイッチになっている人は結構いる」という。

 ところが、自宅勤務になると、こういった動作は省略される。では、いくつかの仕事へのスイッチがなくなってしまった在宅勤務で、社員はどうやって働きやすい職場を構築していけばよいか。まず、キャスターで、在宅勤務を始める従業員たちに最初に求めるのが、自宅やカフェでオフィスと同じ環境をつくるということだ。それは椅子や机といった設備面の話ではない。周りに人がいてガヤガヤしているほうがいいのか、静かなほうがいいのか、要はどんな環境であれば自分が仕事に集中できるかだ。これは、オフィス勤務のときにあった小さなスイッチを自宅で再現するという意味でもある。オフィスでコーヒーを飲むことがスイッチになっていたのであれば、それを家でも同じようにすればいい。