「私の娘も、免許を取るかどうか迷っていました」

なるほど。しかし、こうしたデジタルサービスはポルシェ単体ではなく、VWグループとしてやったほうがシナジー効果も生まれるように思うのですが。

メシュケ:もちろんVWグループとして連携もとっていますし、共通する仕様もあります。ただし、ポルシェのプレミアム顧客のための独自の製品やサービスを提供する必要があります。ちょうどVWグループのなかで、プレミアムグループの再編を行うことになりました。ポルシェが主導するブランドとして、ベントレーやブガッティ、中期的にはランボルギーニも入ってきます。そうしたブランドへの展開はもちろん視野にあります。

しかし、ポルシェがすでにカーシェアリングやサブスクリプションサービスを始めていることに驚きました。日本でも若い世代のクルマ離れといわれて久しいですし、都心部ではカーシェアの割合が増えています。欧州でも同様の危機感があるということでしょうか。

メシュケ:欧州でもそうした傾向はあります。われわれの世代は18歳になれば免許を取るのが当たり前のことでした。でも私の娘は免許を取るかどうか本気で迷っていました。私がこんな仕事をしているにもかかわらずです(苦笑)。とくに大都市では、カーシェアはますます増えていくでしょう。

サブスクリプションサービスは日本でもトヨタや、ボルボなどが積極的に展開しています。ポルシェとしても、今後注力していくべきだと考えていますか?

メシュケ:サブスクリプションサービスは、すべての人がどんなブランドでも使いたい、というわけではないと思うんです。若い人のなかにもポルシェファンはいると思いますし。今あるブランド価値をいかに未来につないでいくか、車両の電動化やデジタル化、そして「ポルシェパスポート(Porsche Passport)」といった定額制のモビリティサービスなど、さまざまなライフスタイルにあうものを提供していく必要がある。そうした中で、カーシェアリングに関しては今後もポルシェブランドを使うのか、他のブランドにすべきなのか、検討していく必要があります。

ポルシェのすべての役員は必ず発売前の新型車をテストドライブすると聞いたことがあります。メシュケさんも「タイカン」はもう試乗されたのでしょうか。

メシュケ:もちろんです。皆さん、必ず驚くと思います。素晴らしい加速性能で、バッテリーを床下に配置していることで重心が低く、路面に吸い付くような感覚が味わえます。911に通じる生粋のスポーツカーといえるものです。楽しみにしていてください。

 ポルシェでは数年以内にデジタル領域の売り上げが10%を超えると見込んでいるという。そしてメシュケ副会長は多額の投資を進めながら営業利益率15%の確保を目指すと語った。昨今よく耳にするようになった「MaaS(Mobility as a Service)」は、ポルシェでも着実に進行しているようだ。

Porsche Passport
2017年に米国アトランタで開始された月額制のサブスクリプションサービス。月額2000ドルの「LAUNCH」プランと、月額3000ドルの「ACCELERATE」プランの2種類があり、保険、税金、メンテナンス費用など一式が含まれている。「LAUNCH」プランでは、ボクスター/ケイマン、マカン、カイエンが、「ACCELERATE」プランではそれに加えて911やパナメーラなど最大22車種が利用可能になる。好きなタイミングで乗り換えが可能で、今週はスポーツモデルで、来週はSUVといった使い方もできる。

「Porsche Host」
2018年10月から米国ロサンゼルスとサンフランシスコでサービスが開始されたTuro(トゥーロ)の「ピア・ツー・ピア(P2P)」方式のプラットフォームを利用した、個人間のカーシェアリングサービス。ポルシェを所有するオーナーが使わない時間に車両をレンタルするもの。レンタル費用はオーナーが任意で設定する。ポルシェ未体験のユーザーが多く利用しているという。

「Porsche in Flow」
2019年にドイツで開始された、ポルシェの認定中古車を活用したサブスクリプションサービス。さまざまなポルシェモデルが利用可能で、初回手数料299ユーロ、月額1299ユーロから。最低契約期間は6カ月間。メンテナンスや税金、保険料など燃料代をのぞくすべての費用が含まれている。予約および契約締結から車両管理といった一連の流れは、ミュンヘン発のサブスクリプションアプリ「Cluno」を使用して行う。

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