これは、ポルシェ本社のあるシュトゥットガルト近郊のルートヴィヒスブルクに置かれたデジタル戦略を担当する子会社だ。巨大なレンガづくりの倉庫を改装したオフィスは、ポルシェというよりまさにITベンチャーの雰囲気だ。独自サービスの開発をはじめ、新技術を保有する企業や新技術を開発するベンチャー企業などとの連携を推し進めている。

シュトゥットガルト近郊のルートヴィヒスブルクの倉庫街にあるポルシェデジタル社。(写真:藤野太一)
シュトゥットガルト近郊のルートヴィヒスブルクの倉庫街にあるポルシェデジタル社。(写真:藤野太一)

 ポルシェデジタル社のCEOは、ITに関するトレンド調査や企業コンサルを担当する米国シリコンバレーの企業、ガートナーの元副社長ティロ・コスロフスキー氏が勤める。設立当初はポルシェ本社の近くで創業することを条件にルートヴィヒスブルクで3人で始めたものが、現在はシリコンバレー、イスラエルのテルアビブ、中国の上海、ドイツのベルリンにもオフィスを構え、従業員数は約3年で80名にまで増えたという。

ポルシェデジタルの手掛けるサービスは主にアプリやWebを通じて展開している。ドイツや米国で開始しているロードアシスタントアプリ「Porsche Road Trip」をはじめ、24時間365日利用可能なパーソナルアシスタントサービス「Porsche 360+」、米トゥーロの「ピア・ツー・ピア(P2P)」方式のプラットフォームを利用した、いわゆる個人間のカーシェアリングサービス「Porsche Host」、ミュンヘン発のサブスクリプションアプリClunoを使用した定額レンタルサービス「Porsche in Flow」など。残念ながら日本では未導入だが、Porsche Road Tripは2020年の運用開始を予定しているという。(写真:藤野太一)
ポルシェデジタルの手掛けるサービスは主にアプリやWebを通じて展開している。ドイツや米国で開始しているロードアシスタントアプリ「Porsche Road Trip」をはじめ、24時間365日利用可能なパーソナルアシスタントサービス「Porsche 360+」、米トゥーロの「ピア・ツー・ピア(P2P)」方式のプラットフォームを利用した、いわゆる個人間のカーシェアリングサービス「Porsche Host」、ミュンヘン発のサブスクリプションアプリClunoを使用した定額レンタルサービス「Porsche in Flow」など。残念ながら日本では未導入だが、Porsche Road Tripは2020年の運用開始を予定しているという。(写真:藤野太一)

ポルシェがサブスクを導入した狙い

 すでにポルシェ自らが、カーシェアリングやサブスクリプション(定額制)サービスを手掛けていることは、日本にいる我々にとっては驚きだ。どんな狙いがあるのか、記者会見後、この領域を担当するメシュケ会副会長を直撃した。

ポルシェAG財務およびIT担当取締役会副会長 ルッツ・メシュケ氏  Lutz Meschke, Deputy Chairman of the Executive Board and Member of the Executive Board, Finance and IT 1966年生まれ、ドイツ出身。KPMG、ヒューゴ・ボスなどを経て2001年にポルシェに入社。2015年より現職。(写真:Porsche AG)
ポルシェAG財務およびIT担当取締役会副会長 ルッツ・メシュケ氏  Lutz Meschke, Deputy Chairman of the Executive Board and Member of the Executive Board, Finance and IT 1966年生まれ、ドイツ出身。KPMG、ヒューゴ・ボスなどを経て2001年にポルシェに入社。2015年より現職。(写真:Porsche AG)

ポルシェのようなプレミアムなスポーツカーメーカーが、なぜデジタル化を進めるのでしょうか? 若い顧客層を開拓したい狙いがあるのでしょうか?

ルッツ・メシュケ氏(以下 メシュケ):若い顧客へのアピールの意味もありますが、今や老若男女、誰もがスマートフォンを使う時代です。すべてのお客さまからデジタルのニーズは寄せられており、これからコネクティビティは100%無くてはならないものになっていくでしょう。近い将来、デジタル化できていないがゆえに、ポルシェといえどもプレミアムブランドでなくなってしまう可能性もあるのです。

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