さらに驚いたのが、競合だと思われるリマック・アウトモビリへの投資だ。ブルーメ会長は「BEVのスーパースポーツカーを手掛けるリマックの強みは、高圧バッテリー技術や電気駆動技術、ヒューマンマシンインターフェースだ。スポーツカーメーカーとして、電気駆動はいずれ唯一の選択肢になると考えている。発電から燃料生産、走行シーンまでのWell-to-Wheel方式でCO2の排出量を比較すると、BEVは、ほかのどの技術よりも優れていることがわかる。その効率は水素の3倍、合成燃料の6倍にもなる。バッテリー技術が進化すればこの差はさらに広がるだろう」と主張した。
そして会長はこう続ける。「次世代の電気自動車の有望な技術は、全固体電池で、エネルギー密度が高く、より安全で、充電時間も短い、設置スペースも重量も小さくてすむものだ。弊社はいま米国のクアンタムスケープと共同で開発を進めており、2020年代後半の実用化を見込んでいる」。
全固体電池は、トヨタを中心に日本でも開発が進められている注目の技術であり、BEV普及の鍵を握るといわれるものだ。いま水面下で開発競争が始まっている。

そして、BEVの普及にとって懸案の充電インフラに関しても、欧州では独ダイムラー、独BMW、米フォード、そしてVWグループなどとのジョイントベンチャーの「IONITY」を設立し、2020年までに400カ所の急速充電ステーションの設置を進める。さらに米国ではVWの子会社エレクトリファイアメリカ、中国ではモビリティチャイナと提携し、急速充電網を着々と拡大している。
日本ではプレミアムEV市場で先行する米国のテスラが、独自のスーパーチャージャー方式の充電施設を少しずつだが拡大している状況にある。日本市場におけるVWグループでは、すでに販売されている「VWゴルフe」や年内に導入予定の「アウディe-tron」、そしてタイカンと続くが、日本国内でのVWグループ同士の連携は今のところ想定されておらず、まずはおのおののディーラーで充電設備を敷設していくことになるようだ。
デジタル化にアクセル全開
電動化と並んでもう一つポルシェが注力しているのがデジタル化だ。生産工程におけるインダストリー4.0の導入や開発におけるAIの活用はもとより、デジタルによって、プレミアムモデルのカテゴリーにおいて、デジタルモビリティーソリューションの有力プロバイダーになるという目標を掲げる。
2016年のパリモーターショーにおいてダイムラーのディーター・ツェッチェ会長が「CASE」戦略(「Connected」:コネクテッド、「Autonomous」:自動運転、「Shared & Services」:カーシェアリングとサービス、「Electric」:電気自動車)を打ち出し、従来の自動車メーカーからモビリティーサービスのプロバイダーに変身すると宣言し大きな話題となった。その後は、日本でもトヨタをはじめ多くの自動車メーカーが同様の動きをみせ、「CASE」は今や業界人なら知らない人はいない言葉になった。
実はほぼ時を同じくして、2016年にポルシェは、「ポルシェデジタル社(Porsche Digital GmbH)」を設立している。
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