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セルビア大統領は中国の医療専門家を空港まで出迎え

 中国政府が発表する感染状況の統計は信頼性に疑問があるのも確かだ。香港の英字紙「サウス・チャイナ・モーニングポスト」は23日、新型コロナウイルスの陽性反応が出たにもかかわらず、無症状であることを理由に公表されなかった事例があると報じた。その数は2月末の時点で4万人以上だという。

 しかし、国内での感染拡大抑制にめどを立てたとみる中国政府は、感染が広がる欧州などへの支援を加速させている。中国国営の新華社は23日、新型コロナウイルスの流行が世界に広がる中で、習国家主席によるトップ外交が活発になっていると報じている。

 新華社によると、1月22日から3月21日までの間に、国連のグテーレス事務総長を含む18の国・機関のリーダーと19回の電話会談を行ったという。フランスのマクロン大統領とは1月と2月に2回行ったほか、3月16日にはイタリアのコンテ首相と、17日にはスペインのサンチェス首相とも電話で会談した。

 医療物資の支援や医療専門家の派遣も目立つ。21日にはセルビアのベオグラードに中国の医療専門家6人が到着し、ブチッチ大統領が空港まで出迎えて、「肘タッチ」で歓迎した。死亡者数が中国を超えたイタリアには18日に、中国の医療専門家の第2陣が到着している。米フォーチュンは、中国の広域経済圏構想「一帯一路」を念頭に置いた「健康のシルクロード」を広げようという取り組みだと報じた。

 中国企業のサービスも同様に世界に広がろうとしている。国連教育科学文化機関(ユネスコ)は、オンライン教育を実施する際に助けとなるツールの一例として、アリババ集団の仕事用コミュニケーションアプリである「釘釘(DingTalk)」や動画投稿アプリ「TikTok」で知られる北京字節跳動科技(バイトダンス)のコミュニケーションアプリ「Lark」を取り上げている。

 欧州と同様に感染が拡大している米国では、トランプ大統領が新型コロナウイルスを「中国ウイルス」と呼ぶなど、中国から流行が始まったことを強調する動きが出ている。中国政府はこれに対し、激しく反発している。そもそも新型コロナウイルスの感染が拡大したのは、湖北省や武漢市など中国の地方政府の初動が遅れたことに原因がある。

 しかし、中国政府はいち早く感染拡大を食い止めた経験と技術力を武器に欧州などの国々への支援に乗り出している。米国と並び立つ大国としての責務を果たしていることを示すと同時に、中国脅威論を抑える狙いもありそうだ。さらに経済の面でもいち早く回復することによって、リーマン・ショック後に大規模な景気刺激策を打ち出した時のように、「世界経済の救世主」となることを考えているのかもしれない。