ASIMOはなぜ未来館を卒業?

18年にASIMOの開発チームは解散してしまいました。その上で、今回の未来館の卒業となると、ASIMOを一般の人が見る機会はゼロになるかと思います。ASIMO実演終了の理由は何なのでしょうか?

小沢さん:契約終了が理由ですね。

 非常に残念ですが、動くASIMOを生で見られる機会がなくなることで、言語化できない情報や効果が得られなくなる可能性があります。

具体的には、どういった効果があったんですか?

小沢さん:ASIMOは身長130cmと大きなサイズではないですが、駆動音を聞いたり動きを見たりすると、人によっては迫力を受けると言います。中には、ぴょこぴょことジャンプするところを見て、あまりの迫力に泣き出す子供もいる。そういった感覚はYouTubeをはじめとする画面越しの映像で見るだけでは得ることはできません。実物を見ることによって、ロボットに興味を持つ人もかなりいました。

ASIMOの20年来のファンである後輩の科学コミュニケーター長島瑠子さん(写真=稲垣純也)
ASIMOの20年来のファンである後輩の科学コミュニケーター長島瑠子さん(写真=稲垣純也)

 ロボット工学を志す学生や、人工知能をより発展させたいと考える科学技術者に多大な影響があったのではないでしょうか。

ASIMOがいなくなることで、ロボット技術の終焉(しゅうえん)を感じる声もあります。その点はいかがでしょうか。

小沢さん:それは明確に否定させていただきます。

 というのも、ロボットにもブームやトレンドがあるんです。2000年当初、ASIMOが発表された頃、人型のロボットが流行しました。

 10年代には第3次AIブームで、ロボットの知能が進化しました。スマートスピーカーはそのひとつの形です。

 新型コロナウイルス禍では、人との接触を避けるためにマスタースレーブ型と呼ばれる遠隔操作ロボットが流行の兆しを見せています。また、ファミリーレストランで配膳ロボットなどを導入する例も増えました。

(写真=稲垣純也)
(写真=稲垣純也)

 ASIMOのようなヒューマノイド型の一般化はまだまだ先かもしれませんが、ロボット技術の発展は人口減少の現代においては必須と言えるはず。ブームの波を何度か越えるうちに、ASIMOが現実のものとなっていくのではないでしょうか。

 また、企業が多額の予算をかけて作るタイプのロボット以外にも、個人やベンチャーが参入できるくらい高性能なハードウエアのコストが安くなってきています。次の段階としては、ロボットがこなせる範囲のことは、少しずつ人からロボットに置き換わっていき、Pepperのような汎用型のロボットが街に出てくる。その中の、ソフトウエアだけをカスタマイズしていくようなやり方が広がっていくのではないでしょうか。

(写真=稲垣純也)
(写真=稲垣純也)

 現在開催中の特別展「きみとロボット ニンゲンッテ、ナンダ?」においても、直立2足歩行ロボットの系譜やこれからのロボット技術について学べるので、ぜひ体験してもらいたいですね。

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