イタリア中部にある自動車フィルター部品メーカー、エコフィルトリは従業員が10人に満たない零細企業だ。昨年、国の支援を得てフィンテック企業から10万ユーロ(約1295万円)の融資を受けた。コロナ禍中で生き残るため、同様の融資を利用したイタリアの零細企業は数千社に上る。

アブルッツォ州バストのエコフィルトリ本社オフィス、16日撮影。提供写真(2021年 ロイター/Simone Scafetta)

 ただエコフィルトリの場合、借りた資金は滞納している家賃や請求書の支払いに回すのではなく、技術刷新に投資した。電気自動車への移行という長期的な課題は以前から抱えていたが、新型コロナウイルスの感染長期化で自動車の走行自体が減り、これまでとは違う新分野の開拓が急務になった。

 エコフィルトリの共同創業者シモーネ・スカフェッタ氏はビデオコールでロイターに対し、「施設を拡充し、ハイテク設備を買い、R&D(研究開発)部門までつくった。この部門で3つのプロジェクトに取り組んでおり、今後は特許を取れればいいと考えている。さらにITに対応した製品とサービスを提供していきたい」と語った。

構造改革、コロナ禍が後押し

 デジタル経済・社会指数(DESI)によると、2019年時点のイタリアのデジタル競争力は欧州連合(EU)加盟諸国中、下から4番目。企業に大規模な技術革新を迫るコロナ禍は、イタリアの低い生産性と成長率をてこ入れする千載一遇のチャンスをもたらしている。

 イタリアの公的債務は世界で3番目に多く、これを支えるには成長率を高めることが不可欠だ。コロナ禍により公的債務の対国内総生産(GDP)比率は1.6倍に膨れ上がっている。

 ミラノ工科大学の調査によると、イタリアの中小企業(SME)は電子商取引や電子インボイスへの適応、ビッグデータの利用といった幅広い指標で見て、スペインに40%の差を付けられている。この差が埋まればGDP成長率は年平均1.9%ポイント上昇する可能性があるという。

 ただポリテクニコでSME・デジタル革新調査部門を率いるジョルジア・サリ氏は、企業がコロナ禍への受動的な反応から戦略的な技術革新へと移行し、それに伴って企業を取り巻く環境も進展しなければ、こうしたことは実現しないと指摘した。

 イタリアの推計によると、同国のデジタル投資額はここ数年、他のEU諸国に比べてGDP対比約2%ポイント分、後れを取っている。

 しかし、コロナ禍は転じて歓迎すべき変化ももたらしている。デル・テクノロジーズの委託で実施された中小企業調査では、86%が昨年にデジタル改革計画を加速したと答えた。これはEU平均の75%より多い。

 ITサービスを提供するVARグループのフランチェスカ・モリアーニ最高経営責任者(CEO)は「パンデミックにより、イタリア企業は自国の大きなデジタルギャップを直視せざるを得なくなった」と話した。

 ユーロ圏は全体でもデジタル経済規模が米国の3分の2にとどまっている。VARグループの調査によると、イタリアのSMEの92%は、コロナ禍で売上高が打撃を被ったにもかかわらず、今後2年間にデジタル投資を行う予定だと答えた。

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