首都圏の電力供給が綱渡りになっている。3月22日はどうにか停電を回避できるメドが立ったが、23日以降も気象状況によって不安を残している。東日本大震災が起きた11年前から電力供給リスクは高まっていたのだが、ここにきて頼みの火力発電にトラブルが発生。気温低下による暖房需要と相まって、あまり意識されていなかった事態が現実のものとなった。いま東京の命運を握っているのは、なんと水力発電だ。
「今晩の停電の可能性は、回避できるメドがたった」。資源エネルギー庁は3月22日の午後9時前に、こう説明した。午後8時以降に東京電力管内で停電する可能性もあったが「午後3時以降に素材関連や自動車など、大口のお客様に節電をかなりやって頂いた。家庭でも相当な暖房の節約をして頂いたのではないか」(東京電力パワーグリッドの岡本浩副社長)という。ただ、22日の午後9時時点でも「電力逼迫警報」は解除していない。ひとまず安定運用できる見通しだが、23日も曇天の予報で、気温の推移と電力需給について油断はできない。
「昨日の想定より、さらに踏み込んだ節電をお願いしたい」。3月22日昼前に経済産業省が急きょ記者会見を開いたとき、東京電力管内で一層の電力削減が必要だとアピールした。萩生田光一経産相も、午後3時から午後8時にさらなる節電をするよう企業や家庭に向けて要請した。東京では雪がちらつくほど気温が下がって暖房需要が増え、想定より電力消費が伸びて厳しい状況になっていた。昼時点で「節電効果は想定の3分の1のみしか出ておらず、系統内のバッテリー残量がなくなったら夕方から停電が始まり得る」(東京電力グループ)と判断。電力は常に需要と供給を「同時同量」に保てなければ、周波数が乱れて停電になる可能性があるためだった。
東京電力管内では「暖房の設定温度20℃」への協力など、寒い日に忍耐を求められている。政府は暖房を1℃下げると1割の節電につながると試算する。午前時点で東電管内は約150万キロワットの節電にとどまってしまい、あと300万キロワットの削減が必要となった。東電グループが保有するバッテリーも徐々に使い、焦燥感が募った。夕方にこうした危機感が広まり、午後7時には節電が475万キロワットに達したという。

首都圏の電力事情は、気を抜ける状況ではない。複数の火力発電設備がストップしており、電力供給を補う頼みの綱は水力発電の一種である「揚水(ようすい)発電」となっている。産業界も対応を迫られ、例えば住友化学は「千葉工場での自家発電について、できる限り東京電力への売電で協力する」という。
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3/22ウェビナー開催、「強い『松下電器』は復活するか プロCIOが挑む巨艦パナソニックのDX」

日経ビジネスLIVEでは3月22日(水)19時から、パナソニックホールディングス(HD)の改革を最前線で率いる、玉置肇CIO(最高情報責任者)を講師に招いたウェビナーを開催します。テーマは「強い『松下電器』は復活するか プロCIOが挑む巨艦パナソニックのDX」です。玉置氏はファーストリテイリングやアクサ生命保険でもCIOとしてDXを推進した、国内有数の「プロCIO」として知られます。連結従業員数が24万人にのぼる巨大組織のDXをどのように進め、さらに今後どう改革しようとしているのかについて語っていただきます。ウェビナー後半では視聴者の皆様からの質問もお受けし、議論を深めていきます。ぜひ、ご参加ください。
■日程:3月22日(水)19:00~20:00(予定)
■テーマ:強い『松下電器』は復活するか プロCIOが挑む巨艦パナソニックのDX
■講師:玉置 肇氏(パナソニックホールディングス執行役員兼グループCIO)
■モデレーター:中山玲子(日経ビジネス記者)
■会場:Zoomを使ったオンラインセミナー(原則ライブ配信)
■主催:日経ビジネス
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