リクルートの授業動画配信サービス「スタディサプリ」の会員数が急増している。全国の高校で、生徒の自習を促す手段として採用が広がっているためだ。就職情報誌から出発した同社は旅行、グルメ、美容、住宅などへサービスの領域を広げ、今は教育でも勢いを増す。高校の支持を得られた理由を探る。

東京都立本所高校では放課後や長期休暇中の自習教材として「スタディサプリ」を使う(写真:本所高校提供)

 東京スカイツリーのすぐ近く、東京・墨田の都立本所高校。放課後になると、生徒がスマートフォンを見ながらノートにペンを走らせる。「苦手分野を補強するために、スタディサプリを使っています」。3年生の学年主任を務める教員、大和雅俊氏が説明した。

 スタディサプリはスマホやタブレット、パソコンで自習するために作られたデジタル教材だ。小学4年生から高校3年生までに学ぶ5教科18科目について約4万本の授業動画をそろえている。1つの画面に、独自のテキストと講師の授業の様子が映し出され、生徒が自分のペースで学ぶ。

 月1980円(税別)を支払えば利用し放題のサブスクリプション型サービスで、リクルートに4月1日に統合する完全子会社、リクルートマーケティングパートナーズ(東京・品川)が運営している。

 2012年にサービスを提供し始めた当初、授業の動画を有料で配信していたのは、予備校が自社の生徒に提供する程度だった。動画の数を豊富にそろえ、誰でも使えるようにしたのはスタディサプリが先駆けだ。

 有料会員数は20年末で157万人に上り、1年間で2倍になった。新型コロナウイルス禍で学校が休みになり、自宅で学べるデジタル教材の需要が高まった中で、主力である高校生の利用が一段と浸透したからだ。全国に約5000ある高校のうち、スタディサプリ導入校は1年間で約4割にあたる2000校へと倍増した。

 まだ競合の少ない市場だが、大手ではベネッセホールディングス(HD)が校務支援や約3万本の授業動画といったメニューがある高校向けサービス「クラッシー」を提供。15年に始め、20年10月の会員数は145万人。同月まで約1年半の会員増加率は3割を切り、リクルートの伸びが目立っている。

学びの「現場」へ入る

 同社の教育事業は1970年、高校の生徒や教員への進路情報サービス(現在の「スタディサプリ進路」)から始まった。全国の大学や専門学校の情報を載せた分厚い冊子を配ったり、生徒に適性診断のテストを受けてもらったりするものだ。

 進路情報サービスの最終的なユーザーは高校生や教員で、情報を提供するのが大学や専門学校。リクルートはそれを仲介する。就職情報誌から出発した同社が旅行、グルメ、美容、住宅などへ領域を広げたのと同じように、広告で稼ぐモデルだった。

 スタディサプリの事業モデルは従来と異なっている。同社が動画を制作し、ユーザーから直接、料金を取る。教育ビジネスとして見れば、進路決定の支援という控えめな役割から、一気に学びの現場へと入っていった。

 リクルートの教育事業を統括する同社執行役員の山口文洋氏は、スタディサプリのアイデアを考え出した2009年ごろをこう振り返る。「世の中の教育コストは高い。広がりつつあった動画とネットの技術を使えば、安くて良質なサービスを提供できるかもしれないと考えた」

 現在、リクルートグループの中で人材派遣や旅行の需要が縮む一方、成長事業として注目されるようになったスタディサプリ。高校が支持する理由の一つはユーザー目線のサービスを磨き続けたことにある。

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