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 未曽有のパニックが始まった――。世界保健機関(WHO)から「パンデミック(世界的な大流行)」と認定された新型コロナウイルスの感染拡大に、世界中で不安が広がっている。欧州ではイタリアを筆頭に感染者が急増し、各国で移動制限の措置が相次ぐ。同じく感染が急速に広がる米国のドナルド・トランプ大統領は、欧州からの入国を制限し、国家非常事態を宣言。

 米連邦準備理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長も実質的なゼロ金利の導入と量的緩和の再開で金融政策を危機モードにシフトした。人の移動だけでなく、イベントや集会の中止・延期や飲食店の休業など様々な経済活動が自粛を余儀なくされ、経済に深刻な負の影響を及ぼしている。

 「2020年にも、リーマン・ショックを超える経済危機がやってくる」と以前から警告してきた世界的な投資家、ジム・ロジャーズ氏を、日経ビジネスは継続的にインタビューしてきた。

 今回の危機を受けて改めて取材に応じたロジャーズ氏は、「新型コロナ問題は、“騒ぎすぎ危機(Overhyped crisis)”だ」と一蹴する一方、「きっかけは“騒ぎすぎ”だったが、危機の兆しは以前から見えており、新型コロナ問題を契機にそれが一気に顕在化してきた」と強調した。新型コロナウイルスとの戦いが沈静化する兆しが見えない中、世界の景気に対する現在の見方や、今後の経済展望について聞いた。

「終わりの始まり」が始まった

 ジム・ロジャーズ氏は昨年、日経ビジネスの取材に「中国の企業倒産などがきっかけになり、世界的な不況が起こる可能性がある。それがその後米国株式市場の大変調につながって世界を席巻する大ニュースとなった時、最悪の危機がやってくるだろう」と話していた。今回、経済変調のきっかけは「中国発の倒産」ではなく「中国発のウイルス」だったが、結果としてロジャーズ氏が予測したような展開となっている。昨年からの経済情勢を踏まえて、現状をどう見ているのだろうか。

 「私は以前から、次は2008年のリーマン・ショックをはるかに超える危機がやってくると言ってきた。それが今、始まろうとしている。強調しておきたいのは、新型コロナウイルスはあくまできっかけに過ぎないことだ。経済危機が来ること自体は、昨年から見えていた。日々の報道、例えば経済紙に毎日隅々まで目を通していたならば、その兆しに気づいていた人も多いはずだ」

 「まずは世界中の国家の財政状況を見てほしい。ラトビア、インド、トルコ、インドネシア。こうした国の苦境が既に、(海外の)新聞の一面を飾ってきた。フランスも、経済的に崩壊しつつあった。世界や米国で、経済的な問題は10年前から起こり始めていた」

 「好不況もあったが、これまで米国の経済的繁栄は100年以上続いた。確かに、この繁栄がずっと続いたっていいはずだと思う。しかし残念ながら、繁栄には必ず終わりが訪れる。もちろん、日本経済にだって終わりは訪れる。今は終わりの始まりだと言ってもいいだろう。それでも国は存在し続けるし、なくなるわけではない。だがこれまでとは状況が変わる」

 「2008年にリーマン・ショックが起きた時、中国企業にはマネーが潤沢にあった。外貨準備が潤沢にあった。だから、中国は備えておいたお金を使って、ある意味、世界経済を救った。しかし今はその中国ですら借金漬けになっている」