2050年宣言とバイデン政権誕生で日本の財界の景色が一変

 もう1つのヘゲモニー・ファイトが「サスティナビリティー(持続可能性)」をめぐるものです。

 最初に手を挙げたのは欧州でした。欧州委員会は2050年までに二酸化炭素などの温暖化ガスの排出を実質ゼロにするという戦略目標を掲げており、この目標達成のための意思決定の材料として「EUタクソノミー」と呼ばれる判断基準を形成してきました。簡単に言えば、経済活動を「サステナブルなもの」「サステナブルでないもの」に線引きするルールです。

 「サステナブルでない」と判断された経済活動は、資金調達が難しくなるだけでなく、炭素税が課されることで競争条件が悪化することになります。

 例えば、「EV」はサステナブルだが、「ハイブリッド自動車」はサステナブルではない。さらに、製造物としての自動車だけでなく、その製造過程における電源までふるいにかけようとしているのだから徹底しています。「石炭火力発電」はサステナブルではないとして、「原子力発電」はどうかというとこれはまだ議論中、という具合です。発電時に二酸化炭素の排出が少ない点を評価しつつ、放射性廃棄物の処理過程での生態系などへの影響についての評価は保留しています。このように、あらゆる生産活動が「グリーンか否か」いずれに割り振られるかによって、企業にとっては、事業自体が継続できるかどうかというレベルで大きな影響を受ける可能性が出てきているのです。

 米国は、トランプ政権がパリ協定を離脱してサステナビリティから距離を置いていましたが、バイデン政権となり、パリ協定に正式復帰し、前政権からの政策転換をアピールしました。一方で、世界最大の二酸化炭素排出国である中国は、昨年7月から欧州との対話を始めつつ、カーボンニュートラルの達成目標を10年遅い2060年にすると表明しました。

 ここでもやはり、ヘゲモニー・ファイトが繰り広げられているのです。欧州は、欧州らしい理想主義を掲げて世界のルールを形成し、この覇権争いに勝ち、自らの経済成長に結びつけるべく官民で必死に取り組んでいます。米国は自国第一主義との間で揺らいでいたが、ようやく脱炭素に向けて戻りつつある。そして中国の本格的な参戦です。2060年に目標を設定し、この覇権を取るべくルール作りに欧州を巻き込んでやろうとしています。

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