セブン&アイ・ホールディングス(HD)名誉会長で、イトーヨーカ堂創業者でもある伊藤雅俊氏が亡くなった。伊藤氏をモデルにした小説『二人のカリスマ』(2018~19年、日経ビジネスで連載)の著者で、伊藤氏と個人的に交流があった作家の江上剛氏に、伊藤氏が戦後の日本の流通業界に残した足跡、さらに『二人のカリスマ』のもう1人のモデルであるセブン&アイHD元会長の鈴木敏文氏と伊藤氏の関係について聞いた。

(取材・構成 日経ビジネス編集部シニアエディター村上富美)

イトーヨーカ堂やセブン‐イレブン・ジャパンなどを展開する、セブン&アイグループを築き、流通の勝者と言われた伊藤雅俊氏(1992年、写真=Fujifotos/アフロ)
イトーヨーカ堂やセブン‐イレブン・ジャパンなどを展開する、セブン&アイグループを築き、流通の勝者と言われた伊藤雅俊氏(1992年、写真=Fujifotos/アフロ)

 「お客さんの顔を見ながら商いをし、喜んでもらいたいんです。会社を大きくしたいわけじゃない。むしろ小さな規模のスーパーを経営したい」──。伊藤雅俊氏の訃報に接し、伊藤氏が何度も繰り返したこの言葉を思い出した。小説を書く数年前から、共通の知人の紹介で、時折、食事をご一緒するようになり、経営に対するお考えや伊藤氏個人についてのお話を聞く機会に恵まれた。

 大柄でやや猫背ぎみの伊藤氏は決して雄弁でもなく、いわゆる商売人という印象ではなかった。メモ魔として知られ、お会いしたときも常に紙とペンを持ち、話を書き取っていた姿が頭に残っている。

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