ウクライナ問題を受け、米国がロシア産原油や液化天然ガス(LNG)の輸入停止に踏み切った。欧州はまだ限定的な対応だが、本格化すれば日本のエネルギー安全保障にも影響を及ぼしかねない。世界有数のシンクタンク、ブリューゲル研究所(拠点はベルギー・ブリュッセル)で資源問題に詳しいタリアピエトラ・シニアフェローにオンラインで見通しを聞いた。

米英はEUと異なる構造
米国がロシア産原油やLNGの輸入停止に踏み切り、英国も追随しました。欧州連合(EU)はロシア産天然ガス輸入の3分の2を減らすとの方針ですが、今後は米国並みの措置もあり得るのでしょうか。
シモーネ・タリアピエトラ、ブリューゲル研究所シニアフェロー(以下、タリアピエトラ氏):米国と英国がロシアからのエネルギー輸入を断つのは比較的容易でした。依存度が低いからです。しかし、EUは天然ガスの40%、原油の25%をロシアに頼っています。このため当面、EUは全面的な輸入停止措置までは踏み込みづらいでしょう。しかも原油と天然ガスの国際相場をあまりに上昇させ過ぎると、ロシアはエネルギー輸出を中国に振り向けることで欧州向けの逸失利益を補填できるでしょう。
だから、「最後の手段」と考えているものが本当に効果的なのかどうかも慎重に考慮すべきです。EUは3月8日、現状の対策としてロシア産天然ガス輸入の3分の2を今年中に削減すると表明しました。既にロシア産原油については民間トレーダーが購入に消極姿勢なので、国際マーケット自身が事実上の制裁を科しているような状況です。今のロシアには買い手の見つからない原油在庫が積み上がっているはずです。そして天然ガスは国際相場が激しく急騰(skyrocket)しなければ、中国に振り向けても採算が合わないでしょう。(欧州が輸入している)シベリア西部のガス田から中国に運ぶパイプライン設備はないからです。
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