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【状況設定】
 2人の消費者(自分と相手)が、それぞれ独立に消費行動を決めるとします。もちろん実際の消費者は、2人だけではなく大勢いるでしょう。このゲームで、「相手」を「自分以外の平均的な消費者」と解釈することで、大勢の中で自分がどう振る舞うべきかを考察することができます【注2】。

  •  各自が選べる行動は「あわてない」と「急いで買う」の2種類。
  •  起こり得る4通りの結果に応じて得られる利得(満足度)は以下:
  •  2人とも「あわてない」・・・在庫が豊富にあり、自分が買いたいタイミングで商品が買える → 利得は 2
  •  自分だけ「急いで買う」・・・商品は買えるが、買いに急ぐ分のコストが1だけ余計にかかる → 利得は 1
  •  2人とも「急いで買う」・・・品薄状態になり、商品を買えないリスクで利得がさらに1下がる → 利得は 0
  •  自分だけ「あわてない」・・・品切れが起こり、必要なときに商品が買えなくなってしまう → 利得は -1

 以上を利得表と呼ばれる表の形で整理すると、【表1】のようになります。各マスの左側の数字が自分の利得、右側の数字が相手の利得を表しています。これは各消費者の満足度のようなものを表していて、数字が大きいほどその個人にとって望ましい結果である、と考えてください。

 ここで、表の左上の「いつもの均衡」と右下の「買い占め均衡」という2つのナッシュ均衡に注目してください(なぜこれらがナッシュ均衡になるのかは以下で説明します)。「いつもの均衡」では、誰もあわてていないので、自分だけ余計なコストをかけて買いに急ぐ意味はありません。

 そのため、自分も「あわてない」のが正解です。結果的に店頭に在庫が残るので、各消費者は自分が買いたいタイミングで商品を買うことができます。買い占め騒動が起こる前に成立していた通常の状況が、この「いつもの均衡」だと考えられます。

 一方の「買い占め均衡」では、すでに周りの消費者が買い急いでいるため、自分だけあわてないでいると、必要なときに商品が買えなくなってしまいます。これが自分にとっては最悪の結果です(利得は -1)。ここで自分も買いに急げば、利得は 0 と低いものの、何も買えないよりはましな結果が実現できます。