これから、お金の話をします。

 と聞いて、もう身構えた人が多いと思います。また「老後2000万円」の脅しか、と。そもそもお金の話は、多くの日本人が苦手としています。昔ばなしを読んでいても、お金持ちは「悪」であるかのように描かれることが多く、どうも私たちの潜在意識に「お金もうけ」は恥ずべきこと、卑しいことという価値判断が刷り込まれているようです。

 確かに、お金もうけのために生きることは愚かなことです。お金を多く持っているからといって、持っていない者を蔑むこともまた愚かなことです。しかし、だからといって、お金に関して無関心でいてよいのかといえばそんなことはありません。むしろ、お金に人生を支配されないようにするために、お金の性質を知っておくことはとても大事なことだと思います。

(写真:PIXTA)
(写真:PIXTA)

 貯蓄がなくても、日々ご飯が食べられて、寝る場所があればいい。そういう価値観を否定しようとは思いませんし、私もそれに近い感覚を持っています。しかし、自分の愛する人が病気に倒れたときに、お金が理由で望む治療が受けられないということがあるかもしれません。子供が才能を開花させ、大きなチャンスをつかもうとしたときに、やはりお金が理由で機会を与えることができず子供に諦めさせなければならなくなるかもしれません。その時に、悔しかったり悲しかったりするとしたら、それはお金に人生の一部を支配されてしまったということです。「お金もうけ」というと、どうもぜいたくをするためのものと受け取ってしまいがちですが、そうではなく、お金を理由に望む選択肢を諦めなければならないような状況を少しでも避けるための「方法」の1つと捉えるべきではないでしょうか。

 では、人生の「取れたかもしれない選択肢」を失わないために、お金をどうためるか。多くの人は、これを足し算と引き算で考えます。

 収入(稼いだお金)-支出(使ったお金)=貯蓄(たまるお金)

 小学校低学年でも分かる数式であり、シンプルで、圧倒的に正しいですね。貯蓄を増やすためには、収入を増やす、支出を減らすという2つの方法があります。

 このサイトの読者の多くは仕事を抱えていて、そのまた多くが会社や団体を経営したり、勤務したりしています。とすれば、収入を増やす方法としては、より高い給与がもらえるところに転職する、副業する、雑収入を得るなどの方法があり得るでしょう。支出を減らすためによくいわれるのは、家計簿アプリなどの利用による「見える化」で変動費に自覚を持ちつつ無駄を省き、毎月かかっている固定費を見直して不要なものを切り落としていくという方法です。体重も毎朝測るだけで痩せるといいますが(加齢のせいか、私の体重は最近は落ちなくなっていますが……)、出ていくお金についてその動きが数値として見えるようになるだけで、身銭を切るという実感が得られ、無意識に無駄遣いを抑制するような心理的な効果が生まれるものです。

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 ただ、今日説明したいのはこの足し算(収入増)や引き算(支出減)の話ではありません。掛け算の話なのです。

 また画面の前で身構えた方が多いのではないでしょうか。そうです。「投資」について話をします。世の中、うまい話はない。絶対にインチキだ。……というその感覚は危機管理的には有用ですが、つかの間それは封印してこの記事を読み進めてみてください。これから説明するのは、魔法のように必ずもうかるというものではありません。一方で、投資は恐ろしい、堅実に生きるためには貯金が一番という話でもありません。世の中には、多くの人たちが失敗を重ねる中で知恵として確立された、もう疑う必要のない「失敗しにくい投資の考え方」というものが確立されています。それだけは知っておいてもらいたい、と思って書いていきます。

 この記事では、個別の商品を推奨するようなことはないので、具体的な商品についてはご自身で調べていただくことになります。大事なのは、投資というものの考え方の根幹を理解することです。そこをつかんでおけば、魅力的に勧誘してくる商品の数々が顧みる必要のないものであることがおのずと分かるようになると思います。

 ちなみに、この記事は2万文字以上あります。情報の断片ではなく、考え方を丁寧に説明しようと試みたためです。お忙しいみなさんに「最後まで読んだらがっかりだった」と思われては残念ですので、以下にどんなことが書いてあるかを箇条書きで示します。あなたの関心のアンテナに何かが触れたら、ぜひ読み進めてください。特に、若い人たちにとっては、自分が持っている意外な「武器」に気づくことができる内容になっていると思います。

この記事に書いてあることのアウトライン
  • お金には値段があり、「時間」によって決まる
  • あなたが働くだけでなく、お金を同時に働かせるべき
  • でも、忙しいあなたには投資案件の精査なんてできない
  • 投資信託を長期・積み立てで買うのがよい理由
  • 知らないと絶対に損する「複利」の威力
  • インデックスかアクティブか、投資信託をどう選ぶ?
  • 資本主義の可能性を信じるなら市場全体を買えばいい
  • 年齢別「老後2000万円」のための毎月投資額
  • 20歳なら毎月1万4000円
  • 人間はみな死ぬ、だからお金が生まれた

 また、記事中には上にすでに掲げましたが、黒板の板書のように記事の要点をまとめて掲載しています。ざっとその板書に目を通して、もう理解していると思うところは飛ばし、関心があるところだけお読みいただくのもよいと思います。

続きを読む 2/12 あなたは10万円をいくらで買いますか?

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