日本のLNG(液化天然ガス)輸入で1割を占めるロシア産を巡り、今後の調達方針に混乱が生じている。ロシアは欧米への報復措置として海外への送金を禁じることにしたが、日本の政府系金融が関わるLNG開発プロジェクトにも影響が出かねないことが分かった。また、欧米による制裁強化の可能性についても、LNG調達の半分を同国産が占める広島ガスなどが対応を検討している。

(写真:アフロ)
(写真:アフロ)

 欧米が国際的な資金決済ネットワークからロシアを締め出す金融政策への対抗措置が、日本のエネルギー調達にも影響を及ぼそうとしている。

 ロシア大統領府は3月1日から効力が発生するとして、国外への外貨送金を禁止すると公表。その後、ロシア中央銀行は「対象となるのは新規の融資案件で、既存の(ロシア側が抱えている)債務の履行は含まれない」という趣旨の声明を出した。ただ、具体的な線引きに曖昧な部分があり「真っ先に詳細を確認すべき規制内容なのに、把握に手間取っている」(日本の大手金融機関)。

 仮に今後の融資についてのみ規制対象となる場合も、何をもって「新たな債務」と区分するのかが重大だ。金融機関は様々なルートで確認を急いでいるが、その詳細な区分方法はまだロシア当局から伝わっていないという。

 この一連の動きは、今後の日本のエネルギー調達にも支障をきたしかねない。特に注目されるのが、「アークティックLNG2プロジェクト」だ。北極圏に位置するロシアのギダン半島で、現地企業のノバテクが中心となってLNGプラントを建設・操業し、2023年から段階的に生産する予定。日本からは石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)と三井物産が共同で10%の権益を持っている。年産能力は1980万トンとなり、8割は北極海航路から東回りでアジアに供給する。日本は単純計算で年間198万トンを輸入することになっている。

 この案件には21年11月、日本の国際協力銀行(JBIC)が17億1000万ユーロ(約2100億円)を上限とする貸付契約をプロジェクトファイナンスとして結んだ。政府の要請により、三井住友銀行にも融資に協力してもらうこととなった。プロジェクトファイナンスなので一度に貸し付けるわけではなく、今後の工事の進捗に応じて徐々に融資することになっている。これがロシアにとって「既存の債務」なのか「新たに発生する債務」と捉えるのかが重要となる。後者の場合、規制対象となり得る。関係者によると、弁護士や政府筋も交えて確認中だが、はっきりした定義が不透明という。

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