「風雲急を告げる欧州のエネルギー市場だが、2011年の福島第1原発事故から11年近くがたつ間、欧州でも“縮原発”が進んだ。原発産業は風前の灯で、フランスはかろうじて残っているものの、規模は小さくなっている。英国など欧州各国は一時、中国の原発産業にすり寄ったが、近年その蜜月関係にも陰りがみえる」

 プーチン大統領はこの選択肢を選ぶだろうか。「行き過ぎた行動に出れば、後々、ロシアが受けるダメージは大きくなる。合理性を考えると、ガスの供給を止めるという行動には出ない。ただ、プーチン大統領の最近の行動は、安全保障や軍事の専門家のこれまでの予測では推し量れないものになっている」(日本エネルギー経済研究所の小山堅専務理事)

 「ガスプロムなどロシアのエネルギー企業は、自分たちが天然ガスの供給を止めれば、これまで信頼されてきた供給者としての地位はもう終わってしまうと考えるだろう。しかし、プーチン氏が止めろといえば企業は従わざるをえない」(同)

KGB出身のプーチン大統領らしからぬ雑な取り組み

 欧州向け天然ガスの供給停止に踏み切るか、それともとどまるか。すべてはプーチン大統領の考え次第だ。

 そのプーチン大統領は、KGB*出身らしからぬ雑な動きをしている。

*:ソ連時代の秘密警察、国家保安委員会。治安維持活動や対外諜報(ちょうほう)活動を担当した

 「プーチン大統領は2月24日、今回の『特別軍事活動』を承認しました。このとき『ウクライナの非軍事化と非ナチ化を目指す』と発言しています。プーチン大統領はウクライナのゼレンスキー政権を『ネオナチ』とみなしているわけです。これはあり得ない話です。ゼレンスキー大統領は、ナチスに迫害されたユダヤ系ですから。プロパガンダであるにしても、もう少しばれないプロパガンダはできないものでしょうか」(小泉悠・東京大学先端科学技術研究センター専任講師)

 「米国などでは『プーチン氏が精神的に不安定になっている』といった説も唱えられ始めています。米共和党のマルコ・ルビオ上院議員がその可能性を公然と指摘し始めるといったことも起きています。事の真偽はともかくとして、今回のウクライナ危機はプーチン氏のイメージを悪い意味で変えました」(土田陽介・三菱UFJリサーチ&コンサルティング副主任研究員)

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