風邪薬やせき止め薬などの市販薬を大量に摂取して、多幸感や高揚感に酔う10代の若者が急増している。2021年12月には、滋賀県守山市のアパートで女子高校生が死亡しているのが見つかった。死因は薬物中毒で、部屋に残されていたせき止め薬や睡眠導入剤などの空き包装シートには、医師が処方せずとも、ドラッグストアで手軽に買える市販薬が含まれていた。
厚生労働省の麻薬取締官として40年近くにわたり薬物問題と向き合ってきた国際麻薬情報フォーラムの瀬戸晴海副代表理事に、深刻化する「市販薬汚染」の実態と対策を聞いた。

市販薬を乱用する10代が増えています。厚労省研究班の調査によると、2020年に薬物依存などで精神科の治療を受けた10代の患者のうち、「主に使用した薬物」が「市販薬」だった人は56%に上りました。14年の調査で1人もいなかったことを考えると、市販薬を乱用する10代が急速に増えています。
国際麻薬情報フォーラムの瀬戸晴海副代表理事(以下、瀬戸氏):「金(きん)パブ」って知っていますか? 一部の若者たちは「パブロンゴールドA」をそう呼ぶなどして、パブロンシリーズをはじめとする風邪薬を1度に20錠や30錠といった単位で摂取しています。体に耐性ができるのに伴って摂取量を増やしていき、最終的に1度に100錠以上を飲むようになってしまう若者もいます。
せき止めシロップ薬の「新ブロン液エース」なども、よく使われています。毎日のように瓶ごとゴクゴクと飲み、「ブロン漬け」になっています。
こうした市販薬にはアヘンや覚醒剤の原料になる成分がわずかに含まれており、大量に服用すれば多幸感や高揚感を覚えます。
失恋や外出自粛がきっかけ
若者たちはどんな心境で市販薬を大量摂取しているのですか?
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