中国はいかなる行動を取るか?

 さて、その中国についてだ。国際社会の目はウクライナに集中するが、事は欧州だけにとどまらない。ロシアがウクライナに侵攻するのと並行して、関係を深める中国が台湾の武力統一を進め、米国に二正面作戦を迫る、との見方が根強くある。

 その一方で、中国はロシアと距離を保っているとの見方もある。英エコノミスト誌は「台湾統一は内政問題。外国による侵略と同列の話ではない」という中国の見方を紹介する。

 中国大使を務めた経験を持つ宮本雄二氏も、2月4日の中ロ首脳会談後に出された共同声明に「ウクライナ」の文字がないことに注目する。「中国側は共同声明において『長期的な法的拘束力を持つ欧州の安全保障をつくり出すためのロシアの提案』に対し『同情的である』と言っている。しかし、共同声明のどこにも『ウクライナ』という国名は出てこない。中国は、ロシアによるクリミア半島併合を認めておらず、ウクライナから武器を輸入し続けている。少なくとも中国にとり、ロシアのウクライナ侵攻はとても賛成できる状況にはない。中国は『NATOのさらなる拡大』に反対しただけで、ウクライナに対するロシアの行動に何のコミットもしていないのだ」

 習近平(シー・ジンピン)指導部は今のところ、ロシアが発した派兵命令への支持を見送る方針と伝えられている。

 ロシアと中国の関係が今後、いかなるものになるのか。これは日本の安全保障にも重要な意味を持つ。笹川平和財団の畔蒜泰助主任研究員は、プーチン大統領が西側に要求する中距離ミサイルの取り扱いが試金石になるとみる。

 「今後、米ロ間で中距離ミサイル問題を巡る具体的な協議が始まったとして、仮にロシアの従来の主張である『欧州には配備しない』との提案を米国が行ったら、ロシアはどうするのか。ロシアは中国の安全をおもんぱかって、アジアも対象にするよう米国とさらに交渉するのか。それとも、モスクワに届くミサイルが配備されないという自国の安全が保障されたことをもってよしとするのか」(同氏)

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