全5014文字

 目的地である小惑星リュウグウ(当時はまだ命名されておらず、「1999JU3」という発見順を示す記号で呼ばれていた)に探査機を送り込むには、適切なタイミングで打ち上げを行う必要がある。2014年の次のチャンスは2020年になってしまう。ここまで遅れると、開発と運用の体制を維持し続けることが不可能になり、はやぶさ2計画はキャンセル必至だ。

 2011年の末の2012年度予算編成で、当時の野田政権と文部科学省は、はやぶさ2に、2014年打ち上げには全く足りない予算を付けた。計画にはっきりと引導を渡すことはしないが、事実上中止にするしかないというところに追い込んだわけだ。合理的な説明もなく、こんなことが行われたのはただただ驚くしかない。これに対してJAXAが、「自らの意志で使途を決める裁量経費で不足分を支出する」と決定したことから、計画はやっと動き始めた。

 2014年12月4日、はやぶさ2は、H-IIAロケット26号機により、種子島宇宙センターから打ち上げられた。

 「初代の同型機を手早く、5年で打ち上げる」はずが、初代のイトカワ探査から9年、初代の地球帰還(2010年6月)からは4年半が過ぎていた。

得手に帆かけて未来へ走れ

 リュウグウからのサンプル採取に成功した今、私たちは、なによりも「はやぶさ2の次」を早急に具体化すべき時期に来ている。現在JAXA・ISASでは、月面への高精度のピンポイント着陸技術を実証する月探査機「SLIM」(2021年打ち上げ予定)を筆頭に、1)火星の衛星フォボス・ダイモスからのサンプルリターンを行う探査機「MMX」、2)木星と同じ軌道を巡るトロヤ群小惑星に向かい、サンプル採取をも目指す「OKEANOS」、3)ふたご座流星群の母天体である小惑星ファエトンをフライバイ探査する小型探査機「DESTINY+」 さらに欧州宇宙機関(ESA)と協力で木星の衛星群を探査する「JUICE」、米航空宇宙局(NASA)との協力でチュリモフ・ゲラシメンコ彗星からのサンプルリターンを行う「CAESAR」……といった探査機構想を進めている。

 これらが、はやぶさ2のときのような、理由ともいえない理由でずるずると遅延し、そのあげくに予算を絞られ、事実上の計画中止に追い込まれるような事態を招いてはいけない。

 日本のお家芸になりそうな分野で「成功した者を罰する」ことをまたやってしまえば、初代からはやぶさ2へとかろうじてつながった日本の太陽系探査の炎は、たやすく消えてしまうだろう。

 宇宙科学には一層の予算が必要だ。しかし予算だけをむやみにつけるだけでもいけない。次なる計画を素早く立ち上げ、後継機や新しい探査機を打ち上げて運用を行い、その現場で次世代を担う若い人が育つ。さらに、より深く自然を知ることができる次の計画を立ち上げるという好循環を作り、回していく必要がある。

 「成功した者を罰するな。得手に帆かけて滑るが如く、未来へ快走させよ」

 宇宙は広く、我々の知恵はまだまだ足りていない。調べるべき世界は遠くどこまでも広がっている。