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 今回のタッチダウンはリュウグウの自転に合わせて差し渡し6mほどの広さの「L08-E1」と命名した場所にピンポイントで行う。そのため、タッチダウン時刻をずらすことはできない。ホームポジションから、リュウグウ上空5kmまでの15kmの降下は当初40cm/秒の速度で行う予定だったが、5時間の開始遅れを取り戻すために90cm/秒まで速度を上げて実施した。

 午後7時10分、高度5000mに到達し、降下速度を10cm/秒に減速。高度500mからは地上からの制御を離れて自律制御に切り替えた。その後も順調にリュウグウに近づいていき、22日午前7時26分に高度45m付近でのホバリングに入り、さらに降下して姿勢を直下の地形に合わせた。

 姿勢変更により高速データ通信を担当するはやぶさ2のハイゲインアンテナが地球方向からはずれた。ここからは、はやぶさ2と地上を結ぶのは情報が乗っていないビーコン電波のみ。地上側はビーコン電波のドップラー変位ではやぶさ2の速度変化を見守ることになる。

 午前7時46分に、はやぶさ2は高度8.5mからの最終降下を開始。午前7時48分にタッチダウンした。これらの時刻は地上が電波を受信した時刻である。現在地球~リュウグウ間は電波で19分かかっており、タッチダウン時刻は、はやぶさ2側の時計では午前7時29分となる。

 直後にはやぶさ2は、視線方向に55cm/秒の速度で上昇を開始。降下から上昇に移動方向が逆転したことで、ビーコン電波のドップラー変位もひっくり返る。確認した運用室では盛大な拍手が起きた。

画面中央部に上昇時のスラスター噴射で表面の砂塵が吹き飛ばされた跡が見える。画面のところどころに見えるぼけた黒点は、吹き上げられた石か砂かが、空中でカメラの前に入り込みピンボケ状態で写ったものではないか、とのこと(右、画像:JAXA、東京大、高知大、立教大、名古屋大、千葉工大、 明治大、会津大、産総研 表記はJAXA発表時のものに従った)

 午前8時9分には姿勢を立て直してハイゲインアンテナを地球に向け、高速データ通信で、タッチダウン時の探査機の状況の送信を開始した。

 午前8時42分、探査機で健全であることと、タッチダウンシーケンスが正常に実行されたことが確認された。

 事前のスケジュール表では、タッチダウンは午前8時25分の予定だった。それが午前7時48分に早まったのは、すべてが順調に遂行されたことを意味する。

 完璧なタッチダウンだった。

はやぶさからはやぶさ2へ、ぎりぎりのところでつながった

 このような成果をはやぶさ2が挙げることができたのは、初代はやぶさの活躍があってこそだ。初代はやぶさは、1990年代に川口教授(当時は助手)が、米ロ欧に人員と予算の規模も、技術も遅れている日本の宇宙探査の能力で、なんとかして世界で初めて、かつ世界第一線級の成果を出すには何をやったらいいのかに知恵を絞り、「重力の小さい小惑星のような小天体からのサンプル採取・持ち帰る(サンプルリターンという)」という突破口を見付けて立ち上げた計画だった。

 それまでの太陽系探査は、月や火星 、金星といった大きな星の探査が中心で、「まず星の横を探査機で通り過ぎて写真撮影、次に星を回る軌道に入ってじっくりと観測、その次に着陸して探査、着陸ができるようになったらサンプルを採取して地球に持ち帰る」という戦略で行われていた。ちなみにこのように順序立てて探査を実施するのは、プログラム的探査そのものである。