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 ついにサンプル採取に成功――宇宙航空研究開発機構・宇宙科学研究所(JAXA・ISAS)の小惑星探査機「はやぶさ2」は、日本時間2019年2月22日午前7時29分、小惑星リュウグウの表面へのタッチダウンに成功した。はやぶさ2はリュウグウのサンプルを採取する装置(サンプラー)を備えている。タッチダウンでは、リュウグウ表面にサンプルを取り込むサンプラーホーンという部位を押しつけ、その瞬間に弾丸を表面に向けて発射、破砕されて舞い上がった表面のサンプルを採取する。

タッチダウン50秒後に、はやぶさ2搭載のカメラONC-W1が撮影したリュウグウ表面の画像を説明する津田雄一・プロジェクトマネージャー。

 2月22日午前9時からの記者会見で、はやぶさ2が事前に仕込んでおいた一連のシーケンスを実行したことが確認できたと発表された。また午前11時からの記者会見では、弾丸を発射したことではやぶさ2内部の温度が上昇したことが示すグラフが公表された。本当に、サンプルが採取できたかどうかは2020年に予定されているはやぶさ2の地球帰還後に初めて分かるが、サンプル採取手順は確実に実行されたわけだ。

 ここまでの、はやぶさ2の小惑星リュウグウ探査は大変順調に進んでいる。プロジェクトマネージャー(プロマネ)を務める津田雄一准教授が率いる運用チームは、初代の技術試験機「はやぶさ」(2003年打ち上げ、2005年に小惑星イトカワを探査・サンプル採取、2010年に地球帰還)の経験の上に積み上げられた技術と宇宙探査のノウハウにより大変手堅く、着実に、しかも成果は最大になるように、はやぶさ2を運用している。この着実さは、「プログラム的宇宙探査」の手法の効果をはっきりと示している。

 プログラム的宇宙探査とは、戦略的に一連の探査機を継続して打ち上げ、運用することだ。初代はやぶさの発案者で、プロマネを務めた川口淳一郎教授は、プログラム的探査の重要性を強く主張し、はやぶさの運用が続いている真っ最中にはやぶさ2構想を立ち上げ、周囲の無理解と戦い、予算不足の苦難を乗り越え、はやぶさ2を実現に持ち込んだ。我々が今観ているのは、川口教授が主張したプログラム的探査の威力そのものである。

 はやぶさ2がリュウグウへのタッチダウンに成功した今、私達は「次のプログラム」を強く意識する必要がある。すなわち、はやぶさ、はやぶさ2を継ぐ、次なるプログラム的探査計画の実現だ。

完璧なタッチダウン

 はやぶさ2は、通常はリュウグウから20km離れたホームポジションという位置で運用されている。当初は21日の午前8時15分からホームポジションを離れてリュウグウへの降下を開始する予定だったが、降下準備のプログラムを動作させたところ、はやぶさ2の位置情報が事前の想定と異なっていることが判明した。その後、降下準備プログラムの約3000もの設定項目が特定の組み合わせになった時にはやぶさ2の保持する位置情報が影響がでることが判明。設定項目を修正して、午後1時15分から降下を開始した。

 リュウグウは岩だらけの地形で、はやぶさ2がタッチダウン可能な表面はあまり広くない。はやぶさ2は100m四方の開けた場所に降りることが可能なように設計されたが、リュウグウにはそのような場所は存在しなかった。このため、運用チームは昨年10月から、差し渡し数mの狭い場所に降りるためのピンポイント・タッチダウンの技術を新たに開発した。