電気自動車(EV)にいち早く舵を切った独フォルクスワーゲン(VW)など欧米メーカーが、日本で攻勢を強めている。国内勢のEVシフトが本格化する前に先手を打って「大衆化」を進めたい考えで、従来よりも価格を下げたEVを相次いで投入、自前で充電網の整備を急ぎ、シェア拡大を狙う。
「環境に配慮、会社を応援」
東京で農産物の一次生産者の販売支援会社を経営する阿部成美さん(30)は昨年9月、初のマイカーとして仏プジョーのEV「e-208」を300万円台で購入した。最初からEV一択だった。「なるべく環境に配慮したものを」との思いからだ。
価格はもちろんだが、企業の理念も購入時の重要な要素で、パイオニア精神に共感できるホンダの小型車「Honda e」も検討したが、航続距離が条件に合わず候補から外した。経営に革新性を感じた「プジョーを応援したい」との思いが決め手となった。
年間500万台前後の日本の新車市場は国内勢がシェア9割以上を握るが、足元で輸入車の販売が急速に伸びている。新型コロナウイルスの感染拡大で旅行や外食を自粛した人たちが外国車を購入しているのが主な要因で、中でも輸入EVの伸びが目立つ。

昨年の国内新車販売(軽自動車を除く乗用車のみ)は前年比3.2%減だったが、外国車に限ると1.7%増、シェアは9.3%で過去最高だった。日本自動車輸入組合によると、輸入EVの新車も2.7倍の8610台と過去最多。独メルセデス・ベンツ・グループのEVは4.4倍の1100台超を売り上げた。
EV専業の米テスラは日本での販売台数を公表していないものの、同社が輸入EVの新車の6割ほどを占めるとみられる。昨年2月に大幅値下げした小型車「モデル3」が国などの補助金を使うと300万円台で買えるようになったことが追い風になった。
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