交通事故が起こりやすいインド

 欧州や米国でもこのサービスの圧倒的な利便性が明らかになってきており、トルコのゲティル(Getir)やドイツのゴリラ(Gorillas)といった新興企業が急速に地歩を伸ばしつつある。

 ただしインドは交通事故が起こりやすいその道路事情により、Qコマースが危険な事業と化している。かつて道路行政の責任者を務めたビジャイ・チッバー氏は「10分というのは非常に厳しい。(道路安全)当局者がいれば、それは企業の特色あるセールスポイントとはなり得ないと言っただろう」と話す。

 ブリンキットとゼプトは、ロイターの問い合わせに回答しなかった。

配達員の重圧

 インドでは都市部でさえ、大半の道路は穴だらけで、牛などの動物が通行の妨げとなるなど車やオートバイの運転手には試練が多い。そして運転手側も基本的な交通ルールを守らないケースが少なくない。

 世界銀行によると、昨年インドでは4分ごとに交通事故の死者が発生した。衝突事故で亡くなる人は毎年およそ15万人に上る。

 一方、ロイターがムンバイ、ニューデリー、グルグラムで13人のブリンキットとゼプトの配達員に取材したところ、全員が配達時間厳守の重圧を受けていると答えており、ダークストアのマネジャーから叱られるのを恐れてスピード違反につながる事態もしばしば起きている。あるブリンキットの配達員は「与えられている時間は5-6分で、緊張とともに生活の不安を感じる」と打ち明けた。

 ブリンキットの最高経営責任者(CEO)は昨年8月、配達員は時間を守れなくても処罰されないし、ダークストアが常に配達先の近くにある以上、自分たちのペースで配達できるとツイッターに書き込んだ。

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