インドの食料品配達サービス業界で、アプリ利用による10分以内の配達を約束する新興企業が、ハイテク機器を使いこなせる顧客を取り込みつつあり、いわゆる「クイックコマース(Qコマース)」のブームを巻き起こしている。その半面で浮上しているのが、時間を守らなければと焦る配達員の交通事故を巡る懸念だ。
アマゾン・ドット・コムやウォルマート傘下のフリップカート、富豪のムケシュ・アンバニ氏が率いるリライアンスなどがひしめくインドの食料品小売市場は既に競争が激しい。
そこにソフトバンクグループが支援するブリンキット、そのライバルのゼプトが10分で届ける便利さを武器に掲げ、市場シェアを奪おうと、人員採用やダークストア(配達専門店)の開設を急ピッチで進めている。10分という配達時間は、従来企業が設定している数時間、ないし数日よりはるかに短い。

ブリンキットやゼプトのサービスは、幾つもの都市部に構えたダークストアで数分のうちに食料品を荷造りし、二輪車の配達員が残りの7分程度で近隣地域に届けるという仕組み。アンビット・キャピタルの首席ITセクターアナリスト、アシュウィン・メフタ氏はロイターに「大手の同業者にとっては脅威だ。人々が10分(の配達)に慣れてしまえば、24時間以内の配達サービスを提供していたこれらの企業も時間短縮を迫られるだろう」と述べた。
調査会社レッドシアの試算では、昨年時点で3億ドル(約340億円)相当だったインドのQコマース市場は2025年までに10-15倍拡大して50億ドルに達するという。
ブリンキットとゼプトは、消費者がさまざまな食料品を思いついた時に衝動買いしたくなる気持ちを満足させるだけでなく、毎日使う品目をすぐに手に入れたいというニーズにも対応。首都ニューデリーの近郊グルグラムで暮らすシャルミスタ・ラヒリさん(75)は以前、アマゾンやインド複合企業タタが展開するオンライン食料品配達サービスのビッグバスケットを熱心に利用していたが、現在はトマトからスープ、ケーキのトッピングに使うチョコレートまで台所の保管分がなくなるとブリンキットを頼りにしている。「これはとても便利で、生活スタイルが様変わりした」と素早く商品を届けてくれる点を高く評価する。
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