(写真:ロイター/アフロ)
(写真:ロイター/アフロ)

 2021年1月20日、ジョー・バイデン氏の第46代米国大統領就任式が執り行われた。コロナ禍による様々な制限、1月6日の連邦議会議事堂での暴動、そして前大統領の欠席という前代未聞のトリプルパンチに見舞われつつも、バイデン政権は無事に幕を開けた。

 この日、バイデン大統領はラルフローレンのカスタムメイドのネイビースーツにコート、白のドレスシャツにライトブルーのタイという装い。彼のステートメントであるブルー系で全体をまとめ、オーセンティックでエレガント、誠実で清潔さが際立ったスタイルだった。中でも、タイのライトブルーは爽やかさや冷静さを印象付けるとともに、希望を感じる変化と変革という意味も持ち合わせている色であり、ここから始まるバイデン大統領の取り組みへの意気込みが感じられた。

 今回の米国大統領選では、公に向けてバイデン大統領が話す場面を、筆者は幾度となく目にしてきた。実は、彼はそれほど話がうまい方ではない。大統領選討論会の際にも心配されていたのはその点だ。しかし、万全の準備をしてきたと思われる戦略的対応で見事乗り切った。20年12月の勝利宣言は、それまでに聞いたことのない大きな声、そして強い意志を感じさせるスピーチだった。そして迎えた21年1月20日の大統領就任式、12月の勝利宣言をはるかに超え、かつてないほどパワフルで、心の底から湧き上がる魂の訴えのようなスピーチを披露した。

 彼が強く訴えかけたのは「Unity(団結)」。分断された米国を団結させることだった。赤(共和党)も青(民主党)もなく、「全ての米国人の大統領になる」ということ。真実を守り、嘘を打ち負かす義務と責任があるということ。皆が恐怖の中で未来を見つめていることを理解していて、一緒に乗り越えるということ。国内だけでなく、世界との関わりも修復するということ。そして、目的と決意を持って、私たちは自分たちの時代の課題に目を向けるということを宣言していた。

 スピーチ内容は、至って当たり前のことを述べたものだった。しかし、この当たり前ほど大事で難しいことはない。特にこの過去4年間の異常事態で、ある種感覚がまひしていたかのような米国にいる我々にとって、当たり前であることがどれだけ貴重かを再認識させられた瞬間だった。それと同時に、長い眠りから覚めたようなすがすがしい感覚になった。それくらい、そのスピーチには4年間、抑え込んできた気持ちを解き放つ力があった。

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