ガンプラ販売する直営店に批判も

 そうした状況悪化を起こす要因としてもう一つ挙げられるのは直営店であるガンダムベースの存在だ。従来、問屋を通した模型店や量販店での購入が一般的であったが、このガンダムベースはガンプラ販売元のBANDAI SPIRITS の直販店舗として運営されている。

 限定商品の取り扱いだけでなく、再販商品の入荷も積極的に行ってきた。他店では購入できないちょっと古いアイテムを買いそろえることも可能で、プロモデラーが組み立て・塗装した垂涎(すいぜん)の機体も見ることができる。出合いと組み立ての技術向上につながる文化的な施設であった。それが今では転売ヤーたちの“狩り場”になっている。ゲリラ販売と呼ばれる予告なしの販売もたびたび実施される。楽しい場所から、いつの間にかガンプラファンが疲弊して消耗するバトルフィード(戦場)になってしまった。開店前は行列ができ、場合によっては朝整理券を受け取っても夕方近くまで入店を待たされる状況になっている。

 「ガンプラが大好きなモデラーたちが近場の模型店や量販店では購入できない。今までの流通網をないがしろにし、メーカーがより利益を得ることが可能なガンダムベースでしか販売されていないのはおかしい」と、地方の模型店からの批判があったほどだ。模型店や量販店が、今のタイミングこそガンダムベースではなく、モデラーたちにより近い一般店舗に出荷してほしいと考えるのは理解できる。

 筆者も幾度もお台場に足を運んだ。まるで、オイルショック時のトイレットペーパー騒動のごとく、数千円のプラモデルを買うために多くの時間を消費させられた。ガンプラ自体のニーズが高まることはうれしい。生産能力の増強で、再販頻度が多くなり、マニアックなガンプラの商品化がなされるなどの期待が高まっていた。だが、棚は空になり、購入者側は始発や終電に乗って行列するような事態にまでなって、多くの人が疲弊している。この状況が続くようではブームに急ブレーキがかかり、一部モデラーの離脱や新規層の取り込み失敗が起きてしまうリスクも否定できない。

 ガンダムベースでは超人気商品のHi-νガンダムのチタニウムフィニッシュと呼ばれる限定モデルについて、1月22日の販売開始を取りやめた。このHi-νガンダムは、前述したジオングやバウンド・ドック以上に人気のガンプラ。ガンプラ界のロレックスとも呼べる存在で、購入するためにはお百度参りのごとく再販タイミングに何度も通うか、転売ヤーから入手するしかない。そんな今一番人気のあるガンプラだ。品薄状況が改善される前に本モデルを販売することについては、多くのモデラーから不満が噴出。状況を考慮してか、1月18日に発売の延期を決定している。

 いつこの状況が改善するかは、誰も読めていない。BANDAI SPIRITSもプラスチックの原料になる原油の高騰が続く中でも、値上げすることなく増産を続けている。また、転売防止のために購入時のランナーからのパーツ切除や箱への店舗購入の押印など、対策も強化しつつある。なぜ、それでも品薄になってしまうのか。次回は、ぬれ手で粟(あわ)にはならなかった、転売ヤーの事情について紹介していきたい。

まずは会員登録(無料)

有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。

※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。

※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。

この記事はシリーズ「Views」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。