中国が新型コロナウイルスの感染を徹底的に封じ込める「ゼロコロナ戦略」を強化しつつある。現在流行の主流となっているオミクロン変異株は毒性が比較的弱い可能性があるものの、感染防御態勢を緩める理由にはならない、というのが当局の立場だ。しかしロックダウン(都市封鎖)も3年目に入り、経済的な混乱ばかりか社会不安さえ取りざたされるようになった。

 新型コロナを巡り、他の国ではパンデミック(世界的大流行)からエンデミック(風土病)局面への移行も話題に上ってきた。その中で中国は、感染を確認次第それ以上広がらないようにする政策を強化し、ロックダウンや大規模な検査などの措置を次々に打ち出している。

 こうしたやり方のおかげで、確かに感染者数は最低限でとどまり続けてきた。しかし、そのせいでより感染力が強いオミクロン株への脆弱性が増している点を指摘する専門家もいる。当初のゼロコロナ戦略の成功が、かえって「あだ」になっているとの見方だ。

中国が新型コロナウイルスの感染を徹底的に封じ込める「ゼロコロナ戦略」を強化しつつある。上海で撮影(2022年 ロイター/Aly Song)
中国が新型コロナウイルスの感染を徹底的に封じ込める「ゼロコロナ戦略」を強化しつつある。上海で撮影(2022年 ロイター/Aly Song)

 当局は今後少なくとも、習近平国家主席の3期目続投が正式に決まる見通しの秋の共産党大会までは、より厳しい規制措置を講じる可能性がある。

 米シンクタンク、外交問題評議会(CFR)のグローバル保健スペシャリスト、ヤンゾン・フアン氏はロイターの取材に、中国が「自らを追い詰めてしまった」と語った。「中央政府は厳格なパンデミック制御措置が引き続き有効に作用すると自信を持っているように見える。しかし人口の大半が新型コロナに対する免疫を獲得していない以上、中国でオミクロン株は容易に急拡大するはずだ」とした。

次ページ 難しさ増す出口戦略