日立製作所名誉会長の川村隆氏は、かつて、日立製作所が7873億円の最終赤字を出した直後の2009年、執行役会長兼社長に就任し、日立再生を陣頭指揮した。コロナ下において低迷にあえぐ日本経済を、これからどう立て直すべきか。川村氏の著書『ザ・ラストマン』の新書版から、特に若い世代に向けたエールを前後2回でお届けする。若い世代に機会を与えることが求められるリーダー・経営層にも響くところがあるはずだ。

 ポストコロナの時代では、企業の中身は相当変わりそうです。

 社会も「モノを求めて」から「幸せを探して」に大きく変わり、個人の生き方は「働きがいの追求」のみではなく「生きがいも求めて」となるのでしょう。

 「働きがい」というと社会的な評価を得ることが一つの目標になりますが、「生きがい」のほうは“本当にやりたいことを一生の間に一つは実行し、その評価は自分自身で”となります。

 どちらを追求するにしても、課題解決において自分が最終意思決定者、つまり「ザ・ラストマン」になる覚悟をした上で対処すると、結果に結びつきやすいし、何より楽しめるということを以下に述べたいと思います。

 企業人として働き始めて以来、若手世代の皆さんはどんな感想を持ったでしょうか?

 「毎日の仕事は些事(さじ)ばかりで、繰り返しも多くつまらない。今はただ大きい組織の中の歯車みたいなものだから、もう少し続けてみよう。仕事の全体像が見えてくると面白くなるのかもしれない」と思っている方も多いと思います。

 そうなのです。もうじき、小集団のプロジェクト活動へ参画する機会を上長がつくってくれるかもしれません。

小集団における最終意思決定者になる

 例えば電力会社で、発電所の発電量増加による「稼ぐ力増強のプロジェクト」を起こすとします。

 上長は水力発電所の定期検査の改革などから追求してみよ、と粗筋を示唆するのみにとどめて、実務は若い人たちの小集団によって行われるよう仕向けます。場合によってはこの粗筋の考案も、その小集団に任せるケースも大いにあり得ます。

 「これまで20年もの間『35日間』に決まっていた水力発電所定期検査を『25日間』にすることができれば、10日間も余計に発電ができ、その分の追加利益は××億円となり、全社的な貢献になる」

 「10日間短縮の隘路(あいろ)事項(計画遂行の妨げとなる点)は水車の補修加工と導水水路の補修工事だから、これを火力タービン工事や水道局からの最新技術導入で実行可能にしよう」「期間短縮によって品質低下が起こらないように予防対策もやっておこう」

 ――という具合に小集団の若い人々だけで討議をして、分担を決めて進めるのです。

 この過程で参加者たちは、自分たちで意思決定をして、それを実行し、成果を見ることの重要性と楽しさを実感します。これこそイノベーションであり、プロセスイノベーションです。誰だって自分が最終意思決定者かつ実行者になるのは、うれしく楽しいことでしょう。ましてイノベーションに関われるのですから。

続きを読む 2/2 若手層のほうも工夫する

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