サイバーエージェントはAI(人工知能)などテクノロジーを重視し、ネット広告とスマートフォンゲームの2大事業で成長を続けている。さらにこの路線で目指す新ビジネスの分野がDX(デジタルトランスフォーメーション)だ。IT(情報技術)の大手など競合する企業は数知れないが、広告に関わる分野では同社に声がかかる。

サツドラ旭ヶ丘南8条店で、サイバーエージェントが参画して店舗のDXに向けた実験が進められている(札幌市)
サツドラ旭ヶ丘南8条店で、サイバーエージェントが参画して店舗のDXに向けた実験が進められている(札幌市)

 北海道を中心に約200店のドラッグストアや調剤薬局を展開するサッポロドラッグストアーのサツドラ旭ヶ丘南8条店(札幌市)。この店舗で、サイバーエージェントが参画して店舗のDXに向けた実験が進められている。

 サッポロドラッグストアーが目指すことの一つが、店内の電子看板で、より来店者に「刺さる」広告を出すことだ。併せ買いなど1日当たりの販売額を引き上げることにもつながりうる。

 サイバーエージェントは例えば、店舗や時間帯で異なる客層に合う広告とはどういったものかを検証する。基になるデータは購買実績のほか、広告ディスプレーに取り付けられているカメラで撮影した年齢や性別だ。「電子広告を表示して購買行動がどう変わるかを把握し、効果的な配信の方法を探る」(サツドラ担当者)

 サツドラではこれまで、店舗や時間帯がどうであれ、決まった広告を流していた。AIをはじめとして同社が築いてきたネット広告のノウハウが、「リアル」の店舗で生きる。一連の実験は20年から進められている。

NTTや伊藤忠と提携

 DXといっても幅広いが、この1~2年、サイバーエージェントが絡む案件が増えているのは、小売りをはじめとした多くの企業にとって、デジタルマーケティングが重要になっているからだ。

 伊藤忠商事やファミリーマート、NTTドコモとは、小売り事業者が保有するデータを活用して電子広告を配信する「データ・ワン」(東京・千代田)を設立し、20年12月に事業を本格的に開始した。

 サイバーエージェントも5%を出資。ファミマの購買データやドコモのポイントデータを生かし、顧客に合わせた商品広告の配信や、商品購買までの効果検証を可能とする広告配信のサービスを提供する。この提携は、段階的にスーパーマーケットやドラッグストアと協業してデータの質を高める狙いがあり、事業の輪が一層広がる。

 DX支援の事業は行政にも広がる。東京都多摩市では東京大学とともに、行政が管理する認可保育所の利用調整について研究している。認可保育所に入れるかどうかは、その世帯の所得などを基に点数が付けられ、これをベースにして決まる。この調整作業の負担が大きく、AIで効率化する。

 サイバーエージェントは21年11月に新たな子会社「サイバーエージェントDX」を設立し、専門的にDX支援に取り組んでいく部隊を整えた。

 DX支援の事業はサイバーエージェントにとって、デジタル処理した広告を掲示するという点ではネット上でも店舗でも変わらず、既存のノウハウを生かせる利点がある。ただ、これまで自前でサービスを開発してきたのとは勝手が違い、様々な企業との協業の上に成り立つ場合が多い。全く違う文化と技術を持つ企業と、いかに円滑にサービス開発を進めていけるかが、新事業に育つうえで一つの課題となる。

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