(前回から読む

 初代「はやぶさ」から「はやぶさ2」という流れは、「いきなりサンプルリターン」という定石外しの奇手で諸外国に追いつき追い越し、続けて定石通りというべき「はやぶさ2」を実施して、日本の太陽系探査の能力を一気に向上させ、同時に「定石外しを定石へと昇華」させるという意義があった。

 では、はやぶさ2が帰還に成功した今、さらなる持続的な太陽系探査に向けての状況はどんなものだろうか。

 悪くない。複数の後継計画が既に実現に向けて動いており、2020年代半ばまでのスケジュールは埋まっている。はやぶさ2が難渋していた2010年に比べるとずっといい。

 だが、その先の2020年代後半から先となると、急速に不確定の霧が立ちこめる。
 後継計画は20年近く、提案と却下を繰り返している。
 さらにその先「さらに遠く、誰も行ったことのない場所へ行く」ための基礎的な技術の開発は、まだ着手できていない。

 これらは予算があれば、今すぐにでも着手可能だ。
 前回のラストのフレーズを繰り返さねばならない。表彰もいいだろう。しかしそれ以上に、はやぶさ2の成功に対して、今度は政府と国民が、予算という形で報いる番なのである。

充実している2020年代前半の探査計画、まだ手が届かぬ火星の向こう側

 まず現状の日本の宇宙探査計画を見てみよう。

 サンプルリターンの後継計画となる、火星の衛星フォボスまたはダイモスからのサンプルリターンを目指す大型探査機「MMX」の開発が2024年の打ち上げを目指して既に始まっている。MMXはまさに新たな定石の延長線上にある、王道を行く探査だ。

 また、小惑星探査という面では、工学実験機「DESTINY +」が同じく2024年の打ち上げ予定で動き出した。DESTINY +は、より小型軽量低コストの太陽系探査機の技術を試験する機体だが、同時に小惑星ファエトン(フェートン)近傍を通過しつつ観測を行うことになっている。月探査に関しては、月着陸試験機「SLIM」が2022年に打ち上げを予定している。月面の狙った場所にピンポイントで降りる技術を実証する機体だ。

 また、日欧共同の水星探査機「ベピ・コロンボ」(2018年10月打ち上げ)が、水星に向かう途上にある。2025年12月に水星周回軌道に入って、観測を開始する予定だ。さらには欧州の木星探査機「JUICE」に日本製の観測機器を提供する計画が進んでいる。JUICEは2022年6月の打ち上げを予定している。木星到着は2029年になる。

MMX(画像:JAXA/カシカガク)
MMX(画像:JAXA/カシカガク)
DESTINY+(画像:JAXA)
DESTINY+(画像:JAXA)
続きを読む 2/5 OKEANOS――地上での長い長い旅路が続く

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