この時、JAXAは自らの裁量で使える経費の中から不足分を充当して計画中止を切り抜けた。

 なお、私は2014年に、はやぶさ2打ち上げまでの「地上における危難の旅」の経緯を『はやぶさ2の真実 どうなる日本の宇宙探査』(講談社 )、『小惑星探査機「はやぶさ2」の挑戦』(日経BP )という2冊の本にまとめた。共に電子書籍版は今も入手可能だ。興味を持たれた方には、読んでもらえれば幸いである。

 こうして最大の危機を切り抜けたはやぶさ2は、2014年12月3日に打ち上げられた。その後6年間の旅の成果が、今我々の手の内にある。米国は小惑星探査機「オサイレス(オシレス)・レックス」で小惑星サンプルリターンを後追いしており、中国も小惑星サンプルリターン計画を立ち上げたことを明らかにしている。

 初代はやぶさによる定石破りは、はやぶさ2により新たな定石に昇華され、諸外国が後を追ってくるようになったのである。

「はやぶさ3」は王道でいいのか?

 時折メディアで目にする、「次なるはやぶさ3への期待」は、確立した定石の上に手堅く王道としての太陽系探査を展開することを意味する。これは大変重要なことだ。

 だが、同時に王道的探査は、探査の成果が投入する資金の多寡で決まる。惜しまず多額の資金を宇宙科学に継続的に投入し続けている米国と中国が、小惑星サンプルリターンに参入してきた今、同じことをやっていては日本が得た工学的優位はいずれなくなると考えねばならない。

 今、行うべきは、王道的な繰り返しによる「はやぶさ3」だけではない。「虎穴に入らずんば虎児を得ず」という初代はやぶさの精神を継いだ、「いまだかつて世界で誰も造ったことのない探査機を造り、誰も行ったことがない場所に行き、誰もやったことがないことをやる」。そんな新たな太陽系探査計画だ。

 そのためには予算が必要だ。表彰もいいだろう。しかしそれ以上に、はやぶさ2の成功に対して、今度は政府と国民が、予算という形で報いる番なのである。

 では、日本の宇宙探査の将来計画は今、どのようになっているのか。

(後編に続く→こちら

まずは会員登録(無料)

有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。

※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。

※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。

この記事はシリーズ「Views」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。

2/22ウェビナー開催、ウクライナ侵攻から1年、日本経済「窮乏化」を阻止せよ

 2022年2月24日――。ロシアがウクライナに侵攻したこの日、私たちは「歴史の歯車」が逆回転する光景を目にしました。それから約1年、国際政治と世界経済の秩序が音を立てて崩壊しつつあります。  日経ビジネスLIVEは2月22日(水)19時から、「ウクライナ侵攻から1年 エネルギー危機は23年が本番、日本経済『窮乏化』を阻止せよ」と題してウェビナーをライブ配信する予定です。登壇するのは、みずほ証券エクイティ調査部の小林俊介チーフエコノミストです。世界秩序の転換が日本経済、そして企業経営にどんな影響を及ぼすのか。経済分析のプロが展望を語ります。視聴者の皆様からの質問もお受けし、議論を深めていきます。ぜひ、ご参加ください。 

■開催日:2023年2月22日(水)19:00~20:00(予定)
■テーマ:ウクライナ侵攻から1年 エネルギー危機は23年が本番、日本経済「窮乏化」を阻止せよ
■講師:小林俊介氏(みずほ証券エクイティ調査部チーフエコノミスト)
■モデレーター:森 永輔(日経ビジネスシニアエディター)
■会場:Zoomを使ったオンラインセミナー(原則ライブ配信)
■主催:日経ビジネス
■受講料:日経ビジネス電子版の有料会員のみ無料となります(いずれも事前登録制、先着順)。視聴希望でまだ有料会員でない方は、会員登録をした上で、参加をお申し込みください(月額2500円、初月無料)

>>詳細・申し込みはリンク先の記事をご覧ください。