典型例は米国の火星探査だ。最初に接近観測の「マリナー4号」で火星表面を撮影し、次に「マリナー9号」が火星周回軌道に入って長期間の観測を実施。次に「バイキング1号/2号」で表面に着陸して詳細を調べた。これらは1回限りではなく様々な目的の下に何回も実施する。そして今、米国は火星土壌サンプルの採取と地球への持ち帰りを目指している段階だ。

プログラム的探査の例。火星に接近・通過観測を行った「マリナー4号」(1964年打ち上げ、左上)。火星周回軌道に入って長期間の継続観測を行った「マリナー9号」(1971年打ち上げ、右上)。火星に着陸した「バイキング1号」(1975年打ち上げ 左下)。サンプル採取のための下準備を行う予定の無人火星探査車「パーサヴィアランス」(2020年打ち上げ、右下)画像はすべてNASA

 最近では、中国の月探査が同じステップを踏み始めた。中国は21世紀に入ってから月探査に惜しみなく予算と人を投入している。月周回探査の「嫦娥1号/2号」、月に着陸して無人探査車(ローバー)を走らせた「嫦娥3号/4号」に続き、この12月には「嫦娥5号」で月面の地下2mからの土壌サンプル1731gを地球に持ち帰ることに成功した。

中国の月サンプルリターン探査機「嫦娥5号」(画像:中国国家航天局)。着陸機と周回機から構成される。月面からの無人サンプル採取は、旧ソ連が1976年に「ルナ24号」で成功して以来44年ぶり。
中国の月サンプルリターン探査機「嫦娥5号」(画像:中国国家航天局)。着陸機と周回機から構成される。月面からの無人サンプル採取は、旧ソ連が1976年に「ルナ24号」で成功して以来44年ぶり。

 中国は、1・着陸機を月面に降ろして地下2mからサンプルを採取、2・月面から打ち上げる、3・月周回軌道で周回機とランデブー・ドッキング、4・サンプルを周回機の再突入カプセルに移し、5・周回機が地球帰還軌道に入る、6・再突入カプセルを分離して地球に戻す、7・周回機は新たな探査へ、という大変複雑で高度なミッションを見事成功させ、中国の宇宙探査技術が世界一線級にまで成長したことを世界に誇示した。

次ページ 予算なき故の定石破り