何のトラブルもないスムーズな帰還だった。トラブルがないことこそが劇的だった――。
小惑星リュウグウの探査を終えた宇宙航空研究開発機構(JAXA)・宇宙科学研究所の小惑星探査機「はやぶさ2」は2020年12月5日には採取したサンプルを搭載した再突入カプセルを分離。カプセルは翌6日午前2時28分頃に大気圏に再突入し、オーストラリア南部のウーメラ砂漠にパラシュート降下。同日回収に成功した。0.1gでも採取できれば成功とされていたサンプルは、カプセル開封後に約5.4gも入っていることが確認された。
はやぶさ2は、2014年12月に打ち上げられ、2018年6月に目的地である小惑星リュウグウに到着(炭素を持つ「C型」という分類の小惑星である)。1年半にわたって探査を実施し、その間に2回の着地とサンプル採取に成功した。2019年11月から地球帰還を開始し、カプセルを無事地表に送り届けた。


探査機本体はほぼ健全な状態で、再び地球を離れて太陽の周囲を巡る軌道に入った。今後は2026年7月に小惑星2001CC21の側を通過して観測を行い、2027年12月と2028年6月に地球スイングバイを実施。2031年7月に小惑星1998KY26にランデブーして詳細探査を行うという延長計画が予定されている。

小惑星を観測し、表面に降りてサンプルを採取し、地球に持ち帰る。しかも探査機は無傷で余力は十分、文句なしの大成功である。
日本政府は12月17日、計画を率いる津田雄一プロジェクト・マネージャ(JAXA宇宙科学研究所教授)以下のはやぶさ2開発チームに、内閣総理大臣顕彰を授けてその栄誉を祝した。

ここで顕彰よりもはるかに大事なことがある。「はやぶさ2の次の宇宙探査をどうするか」だ。まず必要なのはビジョンであり、次に構想であり、研究と技術開発であり、そして最も大切なのが予算の確保である。
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