サイバーエージェントはインターネット産業で日本を代表する企業の一つになった。ネットテレビ「ABEMA」の印象が強いが、屋台骨はネット広告とスマートフォンゲームだ。ある危機をきっかけに営業からテクノロジー路線へと転換。AI(人工知能)など技術を磨き続けて今がある。

サイバーエージェントは1998年の会社設立以来、23期連続の増収となっており、長期の成長を実現している(写真=竹井俊晴)
サイバーエージェントは1998年の会社設立以来、23期連続の増収となっており、長期の成長を実現している(写真=竹井俊晴)

 「今回はインターフェースの振り返りから始めます」。2021年11月、サイバーエージェントが開いたプログラミングセミナーで、参加者20人が講師の言葉に聞き入っていた。

 同年に始めたセミナー「Go アカデミー」に参加するのは社外のエンジニアだ。同社がネット広告やゲームの事業で使うプログラミング言語「Go」について3カ月間、指導する。狙いはプログラマーの採用にある。

 セミナーには入社に興味のある人や、新たなキャリアを模索している人ばかりを集める。そのうえで、セミナーの成績優秀者は入社試験の最終面接にいきなり招く。長瀬慶重常務は「単に技術レベルが高い即戦力だけではなく、チームとして働けるかといった観点も含めて、可能性のあるエンジニアかを見極めている」と説明する。

 手間のかかる採用方法には、エンジニアを確保し育てなければ売り上げも利益も伸びることはないという覚悟が表れている。

電通と競り合う時価総額

 サイバーエージェントの21年9月期連結の売上高はゲーム「ウマ娘 プリティーダービー」がヒットし、20年9月期と比べ39%増の6664億円、営業利益も3倍の1043億円となった。いずれも過去最高だ。国内最大手のネット広告は売上高全体の5割近く、ゲームが4割を占める。

 時価総額は21年12月末時点で9679億円に上る。広告業界のガリバー、電通(1兆1800億円)に肉薄し、博報堂DYホールディングス(7464億円)より高い。

 ネットテレビ「ABEMA(アベマ)」の番組やゲームのヒットが話題に上りやすいが、見逃せないのは1998年の会社設立以来、23期連続の増収となっており、長期の成長を実現していることだ。要因として、営業からテクノロジーへ経営の軸足を思い切って転換させ、テック路線の強化を続けていることが挙げられる。それは現在も進行中で、冒頭に見たような力の入った採用もその一環だ。

 サイバーエージェントの技術力への評価は年々高まっている。まずネット広告事業では、クレディ・スイス証券の斎藤剛アナリストがこう語る。「電通や博報堂を含め、業界で最も高い技術を持つ」。いち早くAIに関する優秀な人材を集めることに注力した結果だ。

 サイバーエージェントは広告代理店として様々な役割を担う。企業の依頼を受けて広告を制作したり、米グーグルや米フェイスブック(現メタ)、ヤフー日本法人などに広告を配信したりする。

 サイバーエージェントが強みを発揮しているのは広告制作だ。ネット広告では、機動的に出稿金額や広告の内容を変更できる「運用型広告」が主流。個人の属性や、パソコンやスマホといったデバイスに応じて広告内容を変更することも可能だ。ただ、掲載するウェブメディアによって運用ルールが異なり、日々変化するため、それに合わせて広告を作り直す必要があり手間もかかる。サイバーエージェントはここに活用するAIで先行する。例えば、蓄積された広告表現のデータから、画像や動画、テキストの組み合わせをAIが生成するアルゴリズム(演算手法)を磨いている。

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