店舗年齢いつも6歳以下に
問 商圏が移り変わると、それに応じて、店も動く必要がありますよね。
答 店にも人と同じように寿命があるんですよ。人間の80歳が長生きだとすれば、店は20歳で寿命ということです。つまり、掛ける4。店が開業から10年なら、40歳の中年で、そろそろくたびれてくる。店の大きさも最初は30坪でしたが、今は2000坪と変化してきた。中に入る商品も、立地も、大きさも全部変わっていくわけですね。古い店を残しておくと命取りになっちゃう。スクラップが先に来ないと。
うちはその店の利益が出ているうちにスクラップします。赤字になってからじゃ、もう遅い。困ってから「後始末」するのではなく、余裕のあるうちに「先始末」することが大切です。うちの店は今、平均4.9年ですが、小学校入学前の年齢にしておきたい。
問 店舗のように、社員の年齢構成でも何か法則はあるんですか。
答 うちは社員の平均年齢を30代前半に常にキープしています。30歳を割ると若輩や未熟者の集まりになり、指揮システムも出来上がりません。前期は中途で56人採用しましたが、30代、40代、50代とバランスを取りました。20代の人は30代が教育をする、30代の人は40代の人が指導していくことを考えて。新人教育にも力を入れています。6月に、今春入社の新人244人を7泊9日で米国に連れていきました。最後の日にラスベガスでばくちをするんですよ。何年かすると、みんな仕事でばくちをしたがる。勘と度胸で商品をバーッと揃えようとね。でもそれじゃあ失敗するよ、やっぱり、科学と論理じゃないと何でも成功しないんだ、ということを教えるんです。朝まで好きなだけやってくださいと(笑)。
問 先ほど、30年計画の最後の10年は米国並みの商品を作る期間だと言われました。インドネシアのメダンに主力の自社工場をお持ちですが、国内でそれを実現するのは難しいですか。
答 米国の商品を見て改めて分かったのは、日本では売らんがためのメーカーや問屋さんの政策による品質だということです。買う側に立った品質・機能が米国型。モデルハウスに行くと、絵、照明、陶器類など、ありとあらゆるものの色を統一している。素材や顔料が違うのに、色調とトーンが同じ。しかも、大量生産しているので価格が安い。大手量販店のシアーズ・ローバックには独自のストアカラーがあり、消費者もそれを楽しんでいます。感動、感激、驚愕しました。ああ、これが米国の豊かさなんだと。この品質、この機能なら価格はどの程度か、米国の商品の方がはるかに分かりやすい。
家具は日本独特のデザインや機能があり、トータルでコーディネーションするのが難しい。一時、九州の産地に出向き、生産をお願いしたんですが、塗料の濃淡や値段がアンバランスでした。タンス屋さん、鏡台屋さん、みな違う工場ですからね。1カ所に洋服ダンス、整理ダンス、食器棚、ベッドとそれぞれラインを設け、そこに屋根をかぶせればいいだろうと、インドネシアに出ました。もう8年になり、年間15万本を生産しています。売上高構成比で言うと、全体の65%が輸入品で、そのうちの8%ほどです。
問 インドネシアでは政治的な問題もあり、何かとご苦労されたのではないですか。
答 ええ。ストライキに入ると、火炎瓶を持って工場の中へ投げ込んでくるんですよ。高さ2mだった塀を3mにし、それでも間に合わず4mにしました。高くすると壁を破ってくるので壁も厚くして。昨年12月のストの際には、我々も閉鎖・撤退するかどうか考えましたが、結局、違法ストということで、現地の全従業員1050人から1年半はもうストをしませんという誓約書を取って収拾したんです。
問 よく生産が途絶えずに続けられましたね。
答 とにかく、何が何でも作らなければという使命感ですよ。価格は安いし、やっぱり品質がいいんですよね。よそと競争しても絶対に強いという自信を持っています。座っての作業を立ち仕事に変えるだけで6カ月のストを打つところですけど、そこはあえて曲げずにカンバン方式を入れて、分単位の作業体制を組んでいます。ただ、あと数年すれば年間30万本を生産する必要が出てきますし、リスク分散の意味もあって来年、東南アジアに別の工場を新設する計画を進めています。
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