デフレの絶頂、今は疾駆

 今振り返ると、方向は間違ってなかったということですね。

 そうです。売り上げや利益が目的じゃなくて、人々のためにとやってきましたから。最近は利益が予想以上に出ていて、目標値を常に超える店もいっぱいある。逆に非常に危機感を持っています。バブルみたいなことが起こるのではないかと。油断が怖い。自信は持つべきですが、過剰になって傲慢になったり、慢心したりすると、その時からもう崩壊が始まるんじゃないか。絶えず変化に対応し、進化していくしかありません。

 拡大のプロセスではインフレ局面だったと思いますが、デフレになる大きな節目をいつ感じましたか。

 1991年頃、本州に出ようと千葉県を中心に3カ所、土地を契約し、手付金として合わせて1億1000万円を入れました。ところが、設計を見積もると、どうやっても採算が合わない。欧米並みの豊かな暮らしをというスローガンを掲げても、それができないのは世の中が間違っているんじゃないか、とその時思いましたね。だから、そんなに長く続くはずがない。下がるのを待とうということで、基礎工事が始まる3日ほど前に、結局3カ所とも出店をやめました。手付金は捨てましたが、20年の契約期間中ずっと赤字の可能性がありましたから。実際に進出したのは93年でした。

 それから、地価は見る見る下がっていきましたね。

 これはもうずるずる下がると確信できましたので、今後10年はデフレの絶頂になる、チャンスだ、と見て、97年2月期からは毎期、3年間は5店ずつ、次に10店、23店と出店を増やしました。疾駆ですね。もう走る時代だと。大規模小売店舗立地法に移行した関係で2002年2月期はゼロでしたが、これは踊り場というのか、休む時だと思い、システムなど次の疾駆のための準備に充てました。無理やり出すと、リストラという後始末をしなければならなくなります。

 店舗については自社で物件を買うケースもありますか。

 10に1つぐらいですね。ただし、物流センターは買います。昨年までに110億円をかけて、埼玉県白岡町に延べ床面積3万6000坪のセンターを整え、来年は神戸市に3万坪の施設を設ける予定です。売上高が400億円ぐらいの時、銀行さんに100億円以上かかる物件で相談に行ったら、「投資が大きいけど大丈夫ですか」と言うんですよ。採算が合うのが600億円ぐらいだと説明すると、「その通りいくんですか」と尋ねられました。「計画しているのでいくんです」としか言えませんよね。実際、計画通りでしたよ。

 前期は既存店売上高が4.4%増でした。集客のため、売り場の鮮度を常に意識しているのですか。

 そうですね。変化しなくてはいけません。商品はデザインもスタイルも1年に40~50%は入れ替えます。繊維なら、家庭で丸洗いし、ノーアイロンで買った時のスタイルを保てるといった使いやすい素材の商品を入れるし、定番品でも回転が悪い商品は外しています。商品開発では、特にパートさんを頼りにしています。パートさんに試作品を作ってもらったり、パートさんを集めて意見を求めたり。うちの顧客の8割が女性ですからやっぱり女性に聞けということです。

 店舗戦略のポイントはどこに置いているのでしょうか。

 10年先、20年先に商圏がどうなるのだろうと予測し、すぐにダメになるところには出しません。毎日、アメーバのように地域は動いています。消費者は車で移動しますから、5年、10年で大きく変わるんです。将来、伸びる地域はどこか、流出・流入人口など科学的にデータ分析します。誤差はほとんど上下10%以内です。

次ページ 店舗年齢いつも6歳以下に