ネットで機械同士が“会話”する

 ITセンターというのは、どのようなことをしているのですか。

 主に米国の情報技術(IT)ベンチャーに投資をしたり人脈を作ったり、技術情報の収集をしたりしています。10人ほど常駐させ、予算は特に決めていませんが年に100億円ほどを用意して投資しています。

 投資はどんな企業に。

 それなんですが、投資先の1つに99年に設立されたばかりの「グラヴィトン」という会社があります。この会社の持っているコア技術に「センサーのデータを無線通信を使ってネット上で管理する」というものがあります。非常に注目されていたので、当社も2億円ほど出資をしました。

 インターネットにセンサーを直接つなぐのですか。

 そうです。これまでのインターネットは、人間と人間のコミュニケーションの道具でしたが、将来はセンサー同士が直接やり取りをするようになって、「センサーネット」ができるだろうと。グラヴィトンはそのための技術を持っているのです。

 インターネットを機械同士のコミュニケーションにも使うとなると、いろいろな用途が考えられますね。

 既に当社はNTTドコモと野村総合研究所の3社で、ドコモのインターネット通信サービス「iモード」を消費者向けでなくビジネス向けに使うための共同研究開発を進めています。その用途の1つに、北陸のある石油会社と実験している、家庭向けの灯油配送サービスがあります。灯油が切れかけると、それをタンクに付けたセンサーが感知してインターネット経由で石油会社の営業所に送信します。それを見て灯油を補充するのです。そのときにせっかく行くんだから、そのほかの商品も載せていこうとか、新しいビジネスモデルができてくるんですな。

 オムロンは、そこでセンサーなど端末機器の開発を担うわけですか。

 それだけでなく、センサーからのデータをリアルタイムで処理する、MtoM(マシーン・トゥ・マシーン=機械同士)のネットワークセンターや、その付帯サービスも手掛けます。そのときに、先ほど申し上げたグラヴィトン社の技術が生きてくるわけですよ。

 今、副社長をこのMtoM事業の立ち上げ担当に指名して、取り掛かり始めたところです。先に申し上げたサフォー教授、そしてグラヴィトン社のソロモン・トルヒーヨ最高経営責任者(CEO)。この両氏の考えが、創業者(立石一真氏)が47年に出会ってインスピレーションを受けた2人の学者の話と同様に、21世紀の我が社の新しい事業の要になると考えています。

 21世紀の技術の1つの象徴はロボットですよね。ITだけでなく、素材、制御などトータルな技術力が要求されます。日本の製造業の目指すべき目標としても、なかなか面白いと思うのですが。

 当社も駅の自動改札機や銀行のATM、また高速道路のITS(高度道路交通システム)などをやってますが、あれもみんなロボットなんですね。当社が住友銀行さんに最初のATMを納めさせていただいたときに、当時の堀田(庄三)頭取が最初に機械を操作されてから、おもむろに機械の裏に回って扉を開けてこう言ったんです。「人間が入っとらんな」と(笑)。つまり、あれも人間の代わりなんですね。

 ただ、人間の感覚や気持ちが直接わかる機械ではありませんがね。そうしたことが機械に伝わるようになれば、もっと利便性、使いやすさが高まり、人間と機械の調和する時代が来るだろうと思います。我々は、それに必要な技術を今から仕込んでおこうと考えているわけです。

 感情や感覚というのは、デジタルではなくアナログなものですよね。

 そうですね。センサーというのはほとんどアナログで、それをコントロールして加工する技術にファジー理論などが使われるんです。ファジー理論も、我々は取り入れるのが早かったですよ。こうした技術の応用を事業として展開したいと考えています。

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