グラム当たりいくらのものを作るか

 これから質的成長に対するイノベーションが、当然起こってくると考えていいわけですか。

 これはもう必需品で、これなしには日本はやっていけませんよ。たとえば、ものを一度グラムで換算してみるといちばんはっきりします。鉄なんかは1グラム当たり5銭です。自動車になると100円になりますよね。それからカメラになると200円かそのくらいになるでしょう。飛行機が50円ぐらいですよ。日本が生きていくためには、私はやっぱりグラム当たりいくらのものをこしらえるかということでものを考えていかなければいけないと思いますね。

 物の見方を変えれば、なにもそう先行きに対して悲観的に考える必要はないということですね。

 日本ってのは、いよいよ、やっていけないとなって壁にぶっつかったら、切り開いて行ける能力を持ってるんで、将来にそれほど悲観はしてません。好むと好まざるとにかかわらず、量的成長から質的成長に変わる形になってきますが、どの企業もそれに対応していかざるを得ませんから。木川田(一隆東電会長)さんが、ソニーは特別だ、としょっ中言われるから、その考えは間違ってるって言い続けてきました。どの会社もソニーみたいな考え方でなきゃやっていけなくなる時代が来ると以前から言ってたんです。いま、やっと、そんな時代がやってきたように思うんです。ところが、ソニーも皆と同じように鈍っちゃったかもしれないけどね(笑い)。

平均的発想では生き残れない

 いずれにせよ、従来のような成長指向から、早く転換に成功した企業が勝つということですね。

 これからの経済成長は、たしかに平均点では伸びが鈍化する。しかし、伸びる企業はうんと伸びるし、伸びない企業はこれまでよりうんと悪くなって、優劣の差が非常にはっきりするというのが私の考えです。そこで伸びるのは、平均的な考え方から離れて、どこかに特殊性を求めるというはっきりしたポリシーを持って運用される企業ですね。よその真似をして、平均的になんでもかんでもそろえていこうなんてやり方は非常に辛くなりましょうね。

 平均的発想から離れるというのは、日本の風土からして実際には、むずかしいことですね。

 日本の悪いところは、スケールの大きいことだけで認められる、すべてのものを備えていることだけで認められる非常に光った小さいというところが、えてして認められなかったことではないですか。そういう光っているところも、やっぱり、スケールを大きくしなきゃならないということで育ち過ぎちゃったという点がありますね。

 しかし、よくわかりませんが、これからは大企業のスケールメリット(規模の利益)が、メリットでなくなっていくような気がしますね。本当のスペシャリティを持った企業が伸びていく時代ですよ。事実、私はこの間、常陸宮のお供をして発明協会の方で神戸地区の優秀な中小企業を見てきましたが、37人の従業員で技術だけを売って年間60億円を売り上げている光学会社とか、アルミサッシの表面処理剤を売って127人の従業員で90億円の収入をあげている化学会社なんかが、現に立派にあるんですからね。

「企業あっての日本」経営者は勇気を

 大企業の立派な研究所から優秀な技術が生まれるという神話は崩れたわけですね。

 そりゃもう何世紀も前の話で、いまは、研究者に明確な目標を与えなきゃだめです。なにかいいタネが生まれたら、そのタネを生かして産業に持ってこようというのは非常にパーセンテージが小さくなっています。このあたりが、いまの大学とか研究所が基本的に考え違いしているところですよ。

 やりようによっては、まだいくらでも企業は成長していける余地があるというわけですね。それにしては、いま大方の経営者は自信を喪失し過ぎていませんか。経営者がほんとうの意味でリーダーシップの発揮を要請されるのは、これからだと思うんですが。

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